副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年8月18日

副作用モニター情報〈293〉 こむら返りに対する芍薬甘草湯の適正使用

 「こむら返り」は、筋肉に発生する強直性けいれんで、就寝中の発汗による水分喪失やミネラル不足で生じるといわれます。芍薬甘草湯は、芍薬に含ま れるペオニフロリンのカルシウムイオンの細胞内流入抑制作用と甘草に含まれるグリチルリチン酸のK+イオン流失促進作用による筋弛緩作用が、予防効果と頓 服での即効的な効果(疼痛消失まで約3分)を示し、汎用されています。
 一方、甘草やグリチルリチン含有製剤の副作用、偽アルドステロン症は重篤副作用疾患マニュアルにも取り上げられ、3カ月以内に発症したものが約4割を占 め、女性(男性の2倍)や低身長・低体重で体表面積の小さい人、高齢者に生じやすく、利尿剤やインスリン使用患者では低カリウム血症を起こしやすく、重篤 化しやすいので注意が必要です。
 民医連の副作用モニターにも、芍薬甘草湯による偽アルドステロン症(浮腫、体重増加、低カリウム血症、脱力感、血圧上昇など)が2007年から現在まで に10件報告され、高齢者で、また常用量投与で多くみられました。
【症例】60代後半・女性、合併症に心疾患があり、フ ロセミド、スピロノラクトン、ジゴキシン、ワーファリンなど内服中。「こむら返り」にツムラ芍薬甘草湯7.5g(分3)連日の処方で、服用20日後の来局 時、浮腫・体重増加(3週間で3㎏増)を訴え、水分貯留を疑い被疑薬を中止した。中止後、体重は4㎏減少し元に戻った。

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 この報告は、高齢者で心疾患があり、利尿薬やジゴキシン、ワーファリンを内服中の患者に対しては、7.5gの連日処方は明らかに過量であり、心不全の悪化や低カリウム血症による不整脈を誘発しやすいハイリスクな状態だったと思われます。
 こむら返りに芍薬甘草湯を処方する場合、1日1回量を就寝前に投与するか、頓用で処方するなど必要最小限にすべきです。とくに高齢者などリスク因子のあ る場合は注意しましょう。また初期症状の血圧上昇、浮腫、体重増加、低カリウム血症によるミオパチーの症状(しびれ、脱力感など)の発現にも十分な注意と モニターが必要です。

(民医連新聞 第1434号 2008年8月18日)

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