民医連新聞

2008年9月15日

フォーカス 私たちの実践 子どもが上手に薬を飲める工夫 愛媛生協病院・小児科外来 寒天入りヨーグルトで苦み抑える

 子どもは、医師の指示通り薬を飲めず、治療効果が得られない場合があります。子どもが服用を嫌がるのは、味が悪い(苦(にが)い)ためと考え、苦みを感じにくい服用方法を検討しました。
 多くの薬剤には、独特の苦みがあります。一般に、苦みを消すために、単シロップやジャム、チョコレートなどに混ぜて飲ます方法がとられています。しか し、金属アレルギーをもつ子どもが多い当院では、チョコレートは利用しにくく、濃い甘味を嫌がる子どももいます。そこで、どんなものに混ぜると飲みやすく なるのか、研究しました。
 方法は、漢方薬と小児科領域でよく処方される薬について、小児科スタッフ五人が実際に服用して判定しました。判定基準は「たいへん飲みやすい」「飲みやすい」「飲みにくい」の三分類です。

寒天と乳脂肪の量で差が

 まず漢方エキス剤(以下、漢方薬)について。単シロップやハチミツなどは、薬が口腔内に残りました。イチゴジャムはイチゴの粒が漢方薬の舌ざわりに似ているため、ごまかされて「飲みやすい」という判定でした。水アメは薬の粒が歯に挟まり不快でした。
 ヨーグルト中の乳脂肪量は容器の表示を参照し、原材料に寒天と表示がある製品のうち、乳清(汁状の部分)が少なく硬いほど寒天が多く含まれると定義しま した。すると、ヨーグルト中の乳脂肪量と寒天の有無によって、飲みやすさに差がありました。
 いろいろ試した結果、寒天と乳脂肪を多く含むヨーグルトが一番苦みを感じずに服用できました。
 次に散剤(粉薬)を検討しました。やはり寒天と乳脂肪が多いヨーグルトが苦みを感じず、薬の苦みが口腔内に残りません。マクロライド系抗生剤(クラリ シッドDsなど)だけは苦みが増強しました。アイスクリームと牛乳は、ほとんどの抗生剤が「飲みやすい」でした。補助ゼリーは軟らかすぎて薬が口腔に残 り、苦く感じます。
 ヨーグルトを使う場合、薬を混ぜるよりも上から振りかける方が、直接舌に薬が触れないので苦みを感じません。

味覚の生理に合う方法で

 味覚は、水に溶けた化学物質が舌の味蕾(みらい)にある受容体を刺激して感じます。味蕾は五~七カ月の乳児がもっとも多く、四〇歳ころから退化し、感受性も低下します。
 基本味覚は苦味・塩味・甘味・酸味・うま味です。その感受性は舌の部位によって異なると言われていましたが、最近の研究では、もっと複雑な識別と伝達経路があることがわかってきました。
 苦みのあるものを乳児の口に含ませると、口をへの字に曲げて泣き出します。一般的に苦さの閾値(いきち)は小さく、甘さや辛さに比べて敏感です。しか し、温度が下がると、どの味も閾値が高くなります。アイスクリームと混ぜると苦みが弱くなる理由です。マクロライド系抗生剤は、酸性のジュースなどで服用 すると、甘味コーティングが剥がれ、苦みが増します。
 乳脂肪分は味蕾をマスクするため、苦みを感じさせないと考えられます。また、塩をなめると苦みが軽減することを実験中に発見しました。苦みがとれないとき、塩せんべいなどを試すとよいです。

誉めて励ますことも大切

 母親は、一般的な方法で子どもが服用しないと、諦めてしまうことがあります。「飲めない」という場 合、医療従事者がよく聴き取りし、味覚の生理や薬剤の特性を考えて、よい方法を見つけることが大事です。すべての子どもが同じとは限りません。また、上手 に飲めたときは誉め、意欲が向上するよう励ますことも大切です。

(民医連新聞 第1436号 2008年9月15日)

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