副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2008年12月15日

副作用モニター情報〈301〉 フロセミドと聴力障害

フロセミド(先発品名:ラシックス(R))の聴力障害は、古くから報告されていました。聴力障害発症の機序は、聴覚系末梢である内耳のラセン器外有毛細 胞の細胞膜にあるATPaseがフロセミドで阻害され、ナトリウムや水が細胞内に流れ込み、細胞が膨隆するためとされています(注)。
 注射で短時間に大量投与した場合は聴覚末梢で高濃度になるため、発症しやすく、静注後10~20分で一過性に発症することが多いとされています。
 しかし今回は内服で報告がありました。透析患者の例で、経過はフロセミド40㎎1錠を12日間服用後、2錠(非透析日)、1錠(透析日)に増量した18日後、急激に右耳の聴力が低下、中止後約8~9日で回復した、というものです。
 フロセミドは、成人男性で血中半減期が、0.35時間と非常に短く、5日以内にほぼ全量が尿や糞中に排泄され、蓄積性は低いと考えられます。
 今回の症例は、60代女性で高度の腎不全のため透析していました。フロセミドは腎不全があると排泄されにくく、透析でもほとんど除去されませんが、糞中 に排泄されるため用量調節の必要はないとされています。薬剤蓄積による副作用の発現は考えにくく、脱水などにより一過性に薬物濃度が上昇し、聴力障害が引き起こされた可能性があります。
 副作用モニターでは、07年以降、フロセミドの副作用は17例報告されていますが、聴力障害は注射も含め今回が初めてです。
 なお、アミノグリコシド系抗生物質やシスプラチンなど聴覚毒性のある薬剤と併用すると、これらの薬剤の濃度を高め、外有毛細胞が壊死し、不可逆的な難聴を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
(注)ラシックスインタビューフォームから(サノフィアベンティス社)

(民医連新聞 第1442号 2008年12月15日)

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