民医連新聞

2002年6月1日

35回民医連総会方針を討議しよう 学習教育月間-4- 史上初のマイナス改定のもと私たちにできることを考え

35回民医連総会方針を討議しよう 学習教育月間-4-

史上初のマイナス改定のもと私たちにできることを考え

2002診療報酬改定をめぐって
長野・松本協立病院リハ会議

 今回の診療報酬改定では、多くの分野で影響がありました。診療報酬改定の全容が明らかとなった3月中旬、長野 県・松本協立病院のリハビリ室スタッフ12人(看護師1、OT5、ST、臨床心理士1、ケアワーカー2)で討議をしました。その様子を松井おりえ科長に聞 きました。

マイナス改定の内容に一同、驚きと怒りの声

 報酬の改定内容には一同ショックを受けました。病院全体で年額約1億2000万円の減収が予測されますが、そのうち1000万円近くが私たちの部門の減収だということが、試算で明らかになりました。
 発症から3カ月以上、また急性期リハの対象(※脳血管障害、脊損などの中枢神経損傷、大腿骨・下肢骨盤・上腕骨などの骨折、開腹・開胸手術後の患者さ ん)外の患者には「1カ月11単位以降は70%の逓減制」が適応されました。この措置は、長期の入院患者へのリハビリの実施抑制の強化につながります。
 また、1人の療法士が1日にリハビリを行える時間も、「1日18単位」に減らされました。1単位20分に換算すると、これまでは九時間だった上限が六時間に報酬を減らされた上、施行時間まで縮小された形になっています。

患者、医療経営のため私たちに何ができるか

 まず職場からまっさきに出た声は、政府に対する怒りでしたが、「このマイナス改定に負けず、医療内容も落とさず、患者さんにしわ寄せせずにすむ手だてはないのか?」と、話し合いました。
 リハビリ部門は、極端に言えば大がかりな医療機器も医療材料も必要なく、場所さえあれば運営が可能。機器や材料を削減することにもなりませんし、残業も少ないため、残業を減らす努力で対応しようとしている他部署とも状況が異なります。
 「訪問リハビリの拡大」、「デイケア(通所リハ)の土曜日開所」の2点をあげて、介護分野へのシフト策を検討しました。
 議論は「患者さんが病院にいられなくなるという流れが進行しているなら、追い出された患者さんたちがいる地域では、私たちの役割を求める声が高まっているはずではないか?」という方向へ。
 デイケアの土曜日開所については、平日と同じ規模ではスタッフの体制が厳しい、という問題が浮上し、実行に移す段階にはありませんでした。しかし、訪問 リハビリは開始してゆくことになりました。実際、訪問リハビリは、地域の中で需要の高いサービスですが、提供者側の手が足りず、これまでもサービス開始待 ちの患者も残されていたことが、在宅介護支援センターなどから知らされていました。

在宅医療を強化し地域に打って出る

 議論は決してスムーズに運んだわけではありません。地域でのリハビリに時間がとられれば、病棟でのリハが質・量 ともに低下すると危惧し、今回の方針に対して退職を希望するスタッフも発生しました。「私たちの仕事はどういうものか?」という当院でのリハ医療のあり方 を再確認することになったのです。
 民医連内に限らず言えることかもしれませんが、リハビリ部門は患者さんの社会背景をつかむ部署だと思うのです。患者さんのQOLを保障するためには、そ の生活の場にも出る必要がある、病院内で行う機能訓練だけがリハビリのすべてではない、と確認し、在宅へのシフトを強める、地域に出る、という方針をかた めました。
 今回の診療報酬改定には、リハビリの職能団体からも異論があがっています。
 医療の質を落とさない努力を行いながら、普段はなかなか弱い分野になっている社保の分野にも「挑戦する必要がある」と話し合っています。

(民医連新聞2002年06月01日/1277号)

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