民医連新聞

2002年6月21日

副作用モニター情報(184)/フルボキサミンによる肝障害

今期、抗うつ薬であるデプロメール(一般名:マレイン酸フルボキサミン)による重篤な肝機能障害が報告されました。

【症例】
 87歳女性、腰痛症で入院。うつ症状悪化のため服用中のルジオミール、スルピリドを 増量。眠気のため、ルジオミールは中止し、デプロメール50mg/日を投与開始。投与開始時の検査値、GOT14U/リットル、GPT9U/リットル。 10日目に表情良好となり、12日目75mg/日に増量し経過観察。しかし14日目に検査値の異常を認め(GOT471、GPT706、LDH730)、 デプロメールの肝機能障害を疑い中止。中止後13日目には、肝機能は改善(GOT29、GPT33、LDH363)。
 フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)は、欧米では十数年の使用経験をもち、大量服用時にも安全性が高いと言われていますが、一方では胃腸管系へ の影響や性機能障害、セロトニン症候群、錐体外路障害などの副作用が認められると言われています。PDR(米国医薬品添付文書集)には、肝トランスアミ ナーゼの上昇は頻繁に起こり、黄疸はまれに生じるとの記載があります。また、英国のモニタリングでは、他のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤) よりも悪心・嘔吐および倦怠感・疲労感がもっとも頻繁であると報告されています。内外二七例の肝障害中、重篤な一三例が、国内で起きたことが根拠となり、 2001年6月に改訂された添付文書では、「重大な副作用」の項にも記載し注意喚起することになりました。
 本症例は、少量で開始され、14日目にGOT、GPTの急激な上昇が確認されていることによりアレルギー性の肝機能障害の可能性があります。また、うつ 症状が改善傾向だったこともあり、GOT、GPT値の上昇を認めるまで、肝機能障害に気づきませんでした。このように、副作用の臨床症状が発現せずに検査 値の異常から診断されることも多く、検査値のフォローは、頻繁に行うことが必要です。さらに、欧米人との薬剤による感受性などの違いから、重篤な肝障害は 新たな副作用の可能性もあり、今後注意深いモニターを行うことが重要と思われます。

(民医連新聞2002年06月21日/1279号)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ