民医連新聞

2002年7月1日

いのちと人権まもれ たたかう列島「神戸方式」/特養入所に独自基準“待機者減らない”と現場は抗議

いのちと人権まもれ

たたかう列島「神戸方式」

特養入所に独自基準“待機者減らない”と現場は抗議 神戸市

 神戸市は今年4月、特別養護老人ホームへの待機者に新たな規準をもうける指針を発表・実施しました。 緊急な入所の要求にこたえるため、これまでの「申し込み順」を廃し、「要介護度」のランクに加え、在宅サービスを限度額の何割まで受けているかなどを点数 化し、入所の優先順位を決める、というもの。特養入所に関してこのような独自の基準を設けたのは全国初。制度そのものの不備のみならず、増える待機者を横 目に、特養を増やそうとしない神戸市に、介護現場からは抗議の声があがっています。この「神戸方式」とはどういう中身なのでしょう? 東神戸病院・介護保 険事業室の藤原和美部長にききました。(木下直子記者)

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 神戸市の「特別養護老人ホーム入所指針」が評価の材料にしているのは、申込者の要介護度と痴呆の程度、介護者の有無と、限度額の何割の在宅サービスを利用しているかという点。「評価基準」に沿って、点数(100点満点)がつき、高得点順で入所が優先されるしくみです。
 市は申請についても、希望者が施設に直接申し込む従来の方法を廃し、ケアマネジャーを通じて行うことを原則としました。
 この「指針」導入が知らされたのは、3月末、4月1日の導入の直前のことでした。「入所申し込みの手続きを行うこと」と通知された神戸市のケアマネジャーたちには、事前の意見聴取も相談もありませんでした。
【在宅サービス利用率で入所必要度や緊急度は測れない】
 「要介護度が高く、在宅サービスの利用率が高い人ほど評価点数が高くなる、という評価基準は、現行の介護保険下でサービスを受けている要介護者の実態に合いません」と、藤原さん。
 現に藤原さんの担当する要介護者は、経済的な事情で充分な介護サービスが受けられていないのです。阪神大震災で負った借金で「年金収入は一定あるが、介 護には、保険料と利用料あわせ1万円以内しか使えない」という制約の中、家族介護で急場をしのいでいます。最も矛盾が多いのが痴呆の人、介護度は低くでる うえ、他人の受け入れが難しいことが多く、サービス利用も低いのです。当然評価の点数は低くなります。
 また「急を要する人に対応」する市の窓口もできましたが「利用には65点以上の人が原則」という前提が書き込まれています。
【施設が増えないのに】 「新基準で100点(満点)の待機者が施設入所できていない」という報告があがっています。受け入れ側の特養関係者からは「空きがないので、入所判定会も開けない」。制度の欠陥とともに、施設が増やされないことが大問題です。
 同市調べでは、特養待機者4211人に対し、特養建設はわずか296人分しか計画されていません(2006年度までの整備計画)。1年以内の入所を希望する待機者が1528人に対しても圧倒的に施設が足りません。
 「必要な方に必要なサービス提供ができる」という市の宣伝はスタート時点で説得力のないものに。
【ケアマネの声は…】
 「神戸方式」には多くのケアマネジャーから異論があがりました。市が定期開催している 「ケアマネジャーの声を聞く会」では、「ケアマネに、市が事前の相談をしなかった、今後は計画段階で審議に意見させてほしい」、「入所手続き業務への報酬 設定を」、「新しい入所指針への苦情対応に責任を」の要求が出されました。また、今回の指針は介護保険の自由契約制の原則にも反しているのでは? との指 摘もあがりましたが、市当局は「そう思わない」の一点張りでした。

 厚生労働省はこの制度を開始早々から各県に紹介するなどの動き。しかし「必要な方に必要なサービス提供ができる」と宣伝された「神戸方式」には、多くの矛盾が浮かび上がっていました。
 「サービス利用者に今後の問題を知ってもらうことが運動の第一歩」と藤原さん。「今度の件では、いっしょにたたかえる人の層もひろがっています。こういう欠陥制度で『神戸』の名を全国に広げたくないですから」。

(民医連新聞2002年07月01日/1280号)

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