副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2010年11月15日

副作用モニター情報〈343〉 統合失調症治療薬・アリピプラゾール(エビリファイ錠(R))の評価

アリピプラゾール(エビリファイ錠(R))は1987年に大塚製薬により合成された新しいタイプの統合失調症治療薬です。本剤は、ドパミンが過剰な状態 ではドパミンD受容体の拮抗薬として働き、ドパミンが減少すると逆に作用することから、世界初のDSS(Dopamine Sysutem  Stabilizer)と呼ばれています。2006年1月に3mg錠と6mg錠が、07年4月に12mg錠が製造販売承認を受けました。
 安全性に関しては、「警告」として、(1)糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡などで死亡に至ることがある、(2)口渇、多尿、頻尿、多食、脱力感 などの異常(高血糖症状)が掲載されています。また、国内臨床試験での副作用発現率は743例中452例(60.8%)で、主な症状は不眠 (27.1%)、神経過敏(14.8%)、アカシジア(11.7%)などです。
 当副作用モニターに今年7月までに集約された報告は4例で、不眠、悪心、左乳房下しこり、食欲増進が各1例でした。乳房のしこりについては添付文書の記 載はありませんが、プロラクチン(黄体刺激ホルモン)の上昇が国内臨床試験、市販後調査で1%未満の頻度で報告されており、因果関係が疑われます。今回の 症例はプロラクチン上昇によって乳汁分泌が刺激され、乳管拡張から起きた乳腺腫瘤と考えられます。本剤の継続中は副作用症状は消失しませんでした。
 また、食欲増進を起こした症例については、血糖値が不明ですが、高血糖状態が疑われました。この症例では、本剤の中止で回復しました。
 正確なリスク評価は得られていませんが、ほかの向精神薬と併用する場合が多いと思われるので、相互作用に注意し、十分に観察するとともに、血糖値の測定も行い、慎重に投与すべきです。

(民医連新聞 第1488号 2010年11月15日)

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