民医連新聞

2002年7月11日

介護実態調査が示したもの/介護者は眠れない

2000 介護実態調査がしめしたもの
日本リハビリテーション医学会報告(3)

介護者は眠れない―睡眠障害因子の検討―

上城 輝士(高知生協病院・医師)

shinbun20020711-1

 介護負担のひとつに「介護者が眠れないこと」が指摘されています。しかしこれまで、介護者の睡眠障害について詳細に検討した報告や、睡眠障害にどのような因子が関連しているかを検討した報告は見あたりませんでした。
 そこで全日本民医連「2000年介護実態調査」から、主介護者のうち「睡眠障害の有無」に回答のあった1万4032人を対象として、介護の負担感となる睡眠障害に関連する因子の検討を行いました。
 睡眠障害の有無に関する設問は「1:介護のために睡眠が妨げられている。2:介護のためかどうかわからないが、介護をするようになってから十分眠れなく なった。3:睡眠は十分にとれる。4:わからない。」の四択となっています。その結果は、主介護者の24%が睡眠障害を訴えていました。回答2を加えると 49%に及んでいます。在宅介護の負担が主介護者に集中していることを示すものです(図)。
 今回の検討では、1を「睡眠障害有り群」に3を「睡眠障害無し群」とし、2と4については除外しました。そして睡眠障害の頻度および関連因子について統 計的手法を用いで検討しました。睡眠障害に関係する因子を10項目で検討しました(表1)。また要介護者を虚弱群・痴呆群・移動困難群・移動困難+痴呆群 の四つに区分し検討しました(表2)。
 その結果、介護者の睡眠障害は、虚弱群に比べて痴呆群、移動困難群、移動困難+痴呆群の場合に強く関係していました。
 痴呆群と移動困難群のオッズ比※を比較すると、痴呆群4.68、移動困難群3.25と、痴呆群の方が睡眠障害有り群に含まれる傾向が強い結果となりまし た。痴呆を持つ要介護者をみている主介護者がより高い介護負担を感じていることを示しています。
 また同居家族数が4人未満であること、介護協力者がいないことも同様に睡眠障害に強く関連していました。さらに今回の検討では、要介護者が男性、要介護 期間が3年以上、主介護者が女性または60歳以上の場合に睡眠障害が現れやすい傾向がありました(表3)。
 睡眠障害に関連する因子を検討した報告はこれまでありません。Chenierは「要介護者の機能低下、介護者の睡眠障害、介護状況における多数要因の存 在が介護負担の増大とナーシングホーム入所の原因と明らかに関係した」と述べています。またARAIらは、介護負担の重さとと相関する因子を調査し、「2 つ以上の問題を持つ要介護老人をみている介護者は、介護負担をより重く感じる傾向にあった」と述べています。
 今回の調査で確認された睡眠障害の因子は、上記の研究で施設入所や介護負担と関連づけられた因子と同様でした。またCharlesらは73人の主介護者 を対象に施設入所の決定に関与した要因を調査し、70%が夜間の睡眠障害が関与したと報告しています。
 このように睡眠障害そのものが在宅介護の継続を困難にし、施設入所と関連する因子です。今回の調査で在宅介護者の約半数が睡眠障害を訴えていることは、施設入所待機者の潜在の多さを示すと考えられます。
 介護負担については、本研究をもとにさらに踏み込んだ検討が必要です。

 
(民医連新聞2002年07月11日/1281号)

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