民医連新聞

2002年7月21日

いのちと人権まもれ  たたかう列島  診療報酬/ “命にも関わる改革が一夜のうちに決められた”

いのちと人権まもれ

たたかう列島 診療報酬

“命にも関わる改革が一夜のうちに決められた”透析患者会

 透析(人工腎臓)治療の分野では、透析食の保険給付廃止、実施時間の評価の廃止、指導料の引き下げなど、 患者の生命・予後に深刻な影響を与える診療報酬改定内容に(表)。宮城の神馬悟通信員からは、宮城県腎臓病患者連絡協議会(宮城県腎協)と懇談を行ったと いう通信が届きました。4月から4カ月近くが経過、今回の診療報酬改悪が透析患者さんに与える影響は? 同協議会を取材しました。(木下直子記者)

人工腎臓(血液透析)
 4時間未満 1630点
 4~5時間 2110 点    →1960点
 5時間以上 2210点
透析医学管理科
 2800点/月→2670点/月
 ※細かく患者の状態を把握すれば医療機関の 持ち出し
シャント手術
 1万3400点→1万700点
外来患者食事加算の廃止→自己負担
 

 「“一夜にして改悪された”という感があります」と、近藤辰雄事務局長は今回の「診療報酬改正」への感想を口にしました。事務局長自身、週3回の透析治療をつづける患者です。
 透析時間の短縮は患者の寿命も縮める
 「福島県では透析時間を短縮する病院が出はじめたそうだよ」同県腎協の名誉会長・菅田耕吉さんが険しい表情で事務所に顔を出しました。
 透析時間の長さによって報酬が決まる「時間評価」が廃止、一律化。透析患者の約八割が受けている4~5時間透析では150点もの減点に。
 30床のベッドを持つ秋田の民間病院の透析室からは「今まで少し出ていた黒字が、4月からゼロに」という報告も。医療機関サイドには透析時間が長いほど不利益が生じる構図。これが短時間透析を増やす要因です。
 「透析時間の短縮が何を意味するのか、患者の寿命を縮めることにつながっている」と近藤さん。専門家の調査でも「3時間より4時間、4時間より5時間の透析を受けている患者の生存率が高い」との結果が出ています(日本透析医学会)

【治療食が廃止、食事代は全額患者負担】
 「食事は最大の問題」近藤さんのもとにも多くの声が寄せられています。これまで治療食として保険で認められていた「透析食」の廃止で、患者は透析中の食事を自己負担することになりました。たんぱく質や塩分濃度の調整など、食事は透析患者の治療には非常に重要な要素です。
 しかし、自己負担化されてからは食事をとらない人、おにぎりだけ持参するという人が。県腎協の調査でも、4月以降約2割の患者が透析中の食事を断ってい ることが判明。一食500円~600円としても、負担は月額約6000円、年間7万円を超える負担は、ただでさえ楽ではない透析患者の生活を圧迫します。

 宮城県腎協の中央団体にあたる全国腎臓病は、診療報酬の再改定を求め(時間評価を元にもどすこと、透析時間中の食事を保険で提供すること、患者の検査回数が減らないよう、適正な報酬設定を行うことなど)運動を行っています。
 「何が2.7%のマイナスか? それどころじゃない。透析分野では10%近いマイナス」近藤さんは語気を強めます。「今回の診療報酬改定は医学的な根拠 もなにも無視して、医療費を削れ、という意向だけで決められたと思う。医療機関とも協力して再改定の運動をすすめたい」。

〈訂正〉前号(7月11日付)の本連載で、開業医の報告部分に「レントゲン技師」という表記がありましたが、正確には「臨床放射線技師」です。

(民医連新聞2002年07月21日/1282号)

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