副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2011年10月17日

副作用モニター情報〈360〉 カマグ(酸化マグネシウム)による高マグネシウム血症

 厚生労働省に酸化マグネシウム(以下Mg)で重篤な高Mg血症25例(そのうち死亡例4例)が報告されたため、2008年9月に使用上の注意に高Mg血症の初期症状と対処法、長期服用における定期的な血清Mg濃度を測定することが記載されました。
 酸化Mgは通常、体内に吸収されることが少ないとされていますが、食事やサプリメント、活性型ビタミンD3製剤などの併用薬剤により吸収が促進される場 合もあります。吸収されたMgは腎臓より排泄されます。健康な腎臓は2g程度の排泄能力があるので、大量のMgを摂取しなければ、高Mg血症になることは ありません。しかし、腎機能低下、加齢、脱水、甲状腺機能の低下などで不要なMgを排泄することができなくなると、血中Mg濃度も上昇します。
症例)90代女性
 2年以上前より便秘症があり、カマグ(酸化マグネシウム)を常用していた。ここ数カ月でカマグが0.5g→1g→2gと増量となり、全身倦怠感を訴え徐脈気味となった。
 食事をしても嘔吐し、反応も悪くかろうじて会話できる程度だった(ComII-10)ため外来受診、3度の房室ブロックにて経皮ペーシング施行。通常は 50~60台の脈拍が30台となり、P波ははっきりせず。意識低下が見られ、硫酸アトロピン注1管静注するも改善せず。経皮ペーシングのもとでCCUに転 送。転送先で洞停止、徐脈性不整脈として緊急で一時的ペースメーカー植え込みを施行。この時、BUN82、CRE3.3、K5.8、Mg5.7、 BNP1595と高Mg血症(正常値1.5~3mg/dl)を認めた。
 ペーシング施行後は心不全改善し、利尿が得られるようになり、高K、高Mgともに改善、脈拍も50~60台で安定した。恒久的ペースメーカーは施行せず退院となった。

 この症例を含め、酸化Mgの副作用報告は1年間で5例ありました。うち3例が高Mg血症およびそれに伴う症状です。1例はMg濃度不明ですが脱力、1例は口唇の腫れでした。
 Mgを含有する薬剤は、カマグだけではなく、制酸剤として使用されるマーロックス、市販の胃薬にも多く、先ごろブームとなった“にがり”もMgを含有し ています。短期の服用で症状が発現する可能性は低いですが、長期間の服用やリスクがある場合、定期的に血清Mgを測定して正常範囲を超えてきた場合は、減 量・中止、他剤への変更などの対応が必要です。また、徐脈や筋力低下が出現した場合は高Mg血症も視野に入れる必要があります。

(民医連新聞 第1510号 2011年10月17日)

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