民医連新聞

2002年9月11日

「地域の中で患者さんをみた」医学生が「主治医」体験/第1回地域医療サマーセミナーひらく(千葉・船橋二和病院)

 この夏、医学生実習が全国の院所でとりくまれました。千葉・船橋二和病院は8月23~24日、「第一回地域医療サマーセミナー」を開催。医学生9人、スタッフあわせて50人が参加しました。テーマは「都市型地域医療の実践」。手づくりのセミナーを取材しました。

鐙(あぶみ)史朗記者

 目玉の一つは「往診・在宅医療実習」。「在宅医療総論」の講義でガイダンスを受けたあと、学生たちは千葉健生病院、南浜診療所、かまがや診療所に分かれ、往診に同行しました。
 出発前に担当医から患者の家庭環境や病状についてレクチャーを受け、往診先では実際に患者さんに触れ、質問もしました。学生にとっては「患者さんの笑顔にふれ、生活環境がわかった」感動の体験でした。

地域の中で暮らす患者さんをみる
 グループワーク「花子さんはお家に帰れるか?」も、患者さんの生活への視点を身につける企画です。班に分かれケアプランの作成を実習しました。
 患者さんの「病気」にしか関心をはらわず診療を行い、もしそのまま患者さんを退院させてしまうと、どのような問題が生じるかと例題を設定、シミュレーションしました。
 花子さんの経過の変化がシート五枚で示されます。そのたびに「退院させていいか? 悪いか? その理由は?」主治医だったらどう判断するか、学生に質問 されます。ソーシャルワーカーと研修医がアドバイザーとなり議論も。学生は花子さんの病状や家庭について熱心に質問。福祉用具を実際に見たり、パンフレッ トで検討して、ケアプランを作成しました。
 ケースワーカーの加藤久美さんは「介護する人をどのようにささえるかという考えが学生から出たことに驚いた。その視点を医師になっても持ち続けてほしい。将来、いっしょに仕事ができたらうれしい」と講評しました。

コミュニケーションの大切さ知る
 医師に必要なコミュニケーションを学ぶ企画にも力を入れました。
 「自己紹介・イメージ交換ゲーム」でまずスキルを学び、うち解け合いました。自分が周囲からどう見られているか、自分の人を見る目はどうなのかという 「自己認識と洞察力」を考えるもの。学生は「自己紹介の時に、もっといろいろ相手のことを聞いておけばよかった」と、コミュニケーションの大切さを実感。
 2日目、友の会員さんの協力で、医療面接を実習しました。池田美佳医師が医療面接に関するミニレクチャー。その後、学生が医師役と患者役の組をつくり、 シナリオを使って医療面接の練習。本番は、友の会員で本物の患者さんに医療面接です。学生らは患者さんの様子に目をくばりながら病状を聞き出す模擬診察を しました。
 患者役の会員さんから「頼りになる感じがした。色いろなことを聞き出そうとする意欲がよくわかった」と評価され、先輩医師から「診察が終わったと思って も、その他に症状はないか再確認した方がいいよ」「時間配分をもっとうまく」などアドバイスされ、「とにかく緊張した」と学生たちはふり返ります。

「臨研」病院指定を機に、青年医師が企画
 2002年4月、船橋二和病院は「臨床研修指定病院」を取得しました。しかし「多くの医学生はまだ知らない。何かアピールする方法はないか」。青年医師 たちは夏のセミナー企画で病院が何をめざし、どんな実践をしているか実際に見てもらおうと考えました。
 先輩医師として「地域に根ざした医療の醍醐味」を語り「地域はどんな医師を求めているか」を考え合い、医学生が将来の進路や医師像を描くきっかけを提供しようというのです。
 研修委員会、医学生委員会に働きかけ、五月に実行委員会を立ち上げました。実行委員長は卒後二年目の松岡角英医師、副実行委員長は池田美佳医師です。職員一丸となって、医学生セミナーに向けた準備を開始しました。
 つながりのある学生に呼びかけ、医学情報雑誌に広告を載せ、ホームページでも宣伝しました。その結果、地元の千葉大など4大学から6年生を含む各学年が参加しました。

「社会的な視点」を新鮮に受けとめ
 森本英樹さん(5年生)は「300床クラスの病院での実習ははじめて。医療従事者の連携が新鮮でした。都市型の地域医療の良さを体験できたのがよかっ た。病気だけ診るのではなくて、地域、社会的な面まで考えることができる医者になりたい」と感想を語りました。
 松岡角英実行委員長は、「患者さんと人間として向き合う『主治医』をめざしてほしい、とのメッセージを込めて企画しました。はじめてだったので手探りの 状態でした。スタッフの協力のおかげで、学生にもうまく伝わったのでは」と二日間の日程をふり返ります。
 日本福祉大学の近藤克則助教授(船橋二和病院出身)が語った、医師に必要な「専門分野とともにプライマリケアの能力」「疾患だけではなく『生活』と『障 害』を診て援助するリハビリテーションの視点」「心のケアーができる能力」「マネージメントする能力」。
 「シンポジウム~地域に根ざした医療の醍醐味~」で語った五人の医師の思い。新貝早百合医師が「自分が追求する医師像をどこなら実現できるかと考えた。 自分の思いを自然に受け入れてくれたのが民医連」と語ったことなど。充実した企画でした。

(民医連新聞2002年09月11日/1286号)

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