副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2012年11月5日

副作用モニター情報〈383〉 ワルファリンと併用薬によるINR上昇の管理

 ワルファリン(商品名;ワーファリン)と他剤との併用によるINR(PT-INR:プロトロンビン時間国際標準比)の上昇については、すでに当モ ニターで2008年6月にフロリードゲルとの併用による症例を紹介しています。今回、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤カプセル(商品 名;ティーエスワン配合カプセル)との併用による報告が寄せられました。
  症例)80代前半女性。ワルファリンの服用を約3年前から開始し、2mg/日でコントロールしていたが(INR 1.84)、膵臓癌との診断で、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤カプセルを40mg/日から開始。
 1週間後に100mg/日へ増量し、その1週間後にINRが4.8に上昇。内出血などは見られなかったが、ワルファリンを中止し、12日後にはINRが1.38に改善。

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 相互作用の機序はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤カプセルによって、ワルファリンの代謝酵素CYP2C9が阻害され、作用が増強した ものです。同じフッ化ピリミジン系抗腫瘍剤であるカペシタビン(商品名;ゼローダ)は死亡例の報告もあり、併用について添付文書上で警告されています。
 その他、当副作用モニターにはオフロキサシン(商品名;タリビット錠)併用によってINR3.4への上昇が示唆された80代男性の症例も報告されていま す。抗生物質との併用では、腸内細菌抑制作用によってビタミンK生産が低下し、ワルファリンの作用増強につながるとの説があります。
 今回の症例では、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤カプセルを処方した時点で、継続処方されていたワルファリンについての情報が、内科から伝わっていませんでした。ワルファリンは多くの薬剤と相互作用を有することから注意が必要な薬剤です。
 相互作用の原因となる薬剤が、他の医療機関から処方される場合も多いと思われます。調剤薬局でのお薬手帳による情報提供管理と併用薬チェックをしっかり行い、出血傾向などの注意喚起が重要です。

(民医連新聞 第1535号 2012年11月5日)

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