民医連新聞

2002年11月21日

「特養ホームたりない 払えない保険料・利用料安く」/ 介護保険の改善求め厚労省と交渉

 11月8日、全日本民医連は、介護保険の改善を求め、厚生労働省交渉を行いました。03年度にむけて、同省で見直し作業中の「介護保険料」 「サービス基盤の整備計画」「介護報酬」について、現場の声を反映させようというもの。 厚生労働省老健局と医政局から7人、全日本民医連からは、介護問題プロジェクト委員を中心に、近県の介護職員あわせて14人が参加し、実情と要望をぶつけ ました。またこの場には小池晃参議院議員(全日本民医連理事)も同席しました。

 

保険料・利用料
「軽減せよ」

 介護保険料は、いまの基準額平均約2911円が、3241円にアップ、自治体格差も2.7倍が8倍にひろがると試算されています。また、低所得者の訪問 介護サービス利用料(介護保険前からの利用者も)の「激変緩和措置」3%を、来年から6%に、段階的に10%にする計画です。
 このような負担増が行われれば、所得の低い人は「必要な介護を減らす、やめざるを得ない」ことは明らか。全日本民医連は、介護保険料をこれ以上引き上げないよう求めました。
 また今回の交渉では、「生活保護基準以下の収入の人の保険料免除を」「市町村が独自に行う保険料減免措置に、国は口出ししないよう」あらたに要求。
 利用料では、低所得者の介護サービス利用料を3%に据え置くこと、高額介護サービスの自己負担を低くすること、特別養護老人ホーム入所者(旧措置者)に、収入にあわせた軽減を続けるよう求めました。

「3%据え置きは10億円で可能」
 厚生労働省の回答は終始「これまでの計画を修正しない」というもの。
 ところが「低所得者の介護サービス利用料を3%に据え置くにはいくら必要か?」との小池議員の質問に対し「10億円の国庫補助があれば」と回答。また現 在、3%の利用料で介護サービスを受けている低所得者は、全国16万4000人にのぼると述べました。

「施設不足」の認識ない厚労省
 サービス基盤の整備について。いま介護福祉施設、とくに特別養護老人ホームの待機者が急増しています。しかし厚生労働省側は、この状況を把握しておらず「特養が不足している認識はない」と言いました。
 「神戸方式」のように、施設づくり・基盤整備にはとりくまないまま、機械的な入所判定基準によって、入所を制限するなど、後ろ向きな対応をする自治体があります。
 民医連側は神戸のような「優先順位方式」は、「介護サービスが自由に選択できるから、保険料を払わせる」との介護保険制度の当初の説明と違う、と指摘。 「希望者に応じて施設が充足するまでの当面の措置なのか?」と質しました。厚労省側はしばしば答えにつまりながら、「待機者に対応して施設をつくれば、保 険料が上がる」と、苦しい言い訳。
 また「介護保険法に基づいて、緊急時対応の窓口を置くよう、全自治体に指導を」と要求すると、「担当部署に伝える」とだけ答えました。
 また、特養の入所基準について、旧措置者の経過措置を継続するかどうか、2005年の介護保険見直し時に検討することを明らかにしました。

ケアマネ報酬正しく評価を
 介護報酬について。とくに低いケアマネジャー業務に対する報酬の是正を求めました。現在のままでは独立した事業所運営ができず、ケアマネジャーの公的な性格と中立性を維持できない状態であることを訴えました。
 これに関して同省は、介護保険以外の財源を確保することを、二〇〇五年制度改正時に検討する意向を示しました。


息子が急死し「帰る所がない」
 「12月から行き場のない入所者がいるんです」。千葉・介護老人保健施設「まくはりの郷」加藤久美さん(同在宅介護支援センター所長)は、厚労省との交渉で基盤整備の必要性を訴えました。
 退所日の事件。Aさん(72)は要介護3、今月1日に同施設を退所し、息子さん(52)をあてにして在宅生活に戻る予定でした。ところが、退所日、迎え に来るはずの息子さんの姿が見えません。不審に思った施設スタッフが自宅を訪れ、そこで亡くなっている息子さんを発見。
 Aさんがいたベッドはすでに埋まり、たまたま空きの出た同施設内のショートステイ枠で一カ月、Aさんのとりあえずの居場所を確保しました。Aさんは他に身よりもなく、ADLも悪く、独居も考えられません。
 生活保護の担当ワーカー、ケアマネジャーら3人が手分けし、県内の全施設に問い合わせましたが、入所できる施設は一カ所もなし。さらに、Aさんの兄弟の いる茨城、岩手と、手を伸ばしてもだめ。12月まであとわずか、職員のツテまでたどって他県への問い合わせをつづけています。
 「電話にしがみついて探してもこの状態。これを知っているAさん本人も、食欲をなくすなど、不安げな毎日です。緊急事態が起きても、要介護者が入れる場所がない、施設は圧倒的に足りない」と、加藤さん。

*  *  *

 千葉民医連では、社会福祉法人「千葉勤労者福祉会」を創設。生活支援ハウスやグループホーム(痴呆対応型共同住宅)などの複合施設を来年開設することに。医療改悪で「社会的入院」患者の追い出しがすすめられるなか、少しでも受け皿を、と努力が続いています。

(民医連新聞2002年11月21日/1293号)

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