国民のみなさま

2015年1月7日

【声明2014.12.26】介護報酬の引き下げに断固反対する

2014年12月26日
全日本民主医療機関連合会 会長 藤末 衛

 政府は、平成27年度予算編成において介護報酬を大幅に引き下げる方向で調整を進めてい る。12月25日には、財務省が予算編成「建議」をとりまとめ、6%の大幅な削減を重ねて提言した。慢性的な人手不足をはじめ、介護現場の厳しさは年々増 大している。介護報酬の引き下げは到底納得しうるものではない。

 引き下げの根拠として、介護事業所の収支差率(利益率)の高さと、特別養護老人ホームにおける内部留保の存在が繰り返し強調されている。厚生労働省が実 施した「介護事業経営実態調査」では、全事業所の平均収支差率8%という結果が示されている。しかし、この中には利益をほとんど出せない事業所や収支差が マイナスになっている事業所が多数存在しており、同じサービス事業でも法人形態、事業規模、開設時期など個別の事情に収支差率は大きく左右される。さらに 各サービス種別の有効回答率は4~5割台にとどまっており、複合型サービスに至っては有効回答数はわずか42事業所にすぎない。小規模事業所など回答する こと自体が困難な事業所の経営実態が反映されていない可能性があることも否めない。平均値を根拠とする介護報酬の画一的な引き下げは、地域に必要とされる 事業所を間違いなくつぶすことになる。
 財務省は、特別養護老人ホームについて「内部留保」の存在を指摘し、「内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬を適正化する」としている。しかし、全国老 人福祉施設協議会の調査によれば、現状では特別養護老人ホームの3割近くが赤字となっており、「仮に財務省案通り6%の介護報酬引き下げがされた場合、6 割近くまで赤字に転落する」と指摘されている。一部の社会福祉法人で多額の利益を保有していることが再三報じられてきたが、施設の改修や建て替えなど将来 必要とされる資金まで「内部留保」として一括し、全ての特別養護老人ホームを十把一絡げに引き下げの対象とする手法には無理があり、疑問を抱かざるを得な い。

 介護報酬改定は過去4回実施されてきた。2003年改定▲2.3%、2006年改定▲2.4%とマイナス改定が続き、2009年改定ではプラス改定を求 める現場の要求で初めて3%の引き上げが実現したが、2012年年改定は公称1.2%のプラス改定とされたものの、介護職員処遇改善交付金を介護報酬上の 加算に組み入れたことにより、実質▲0.8%のマイナス改定となった。介護報酬は2000年の制度スタート以来、引き下げの基調で推移している。こうした 低介護報酬の固定化が、介護の質の向上、職員の処遇改善、事業所の安定的経営を阻んでいる最大の要因になっている。
 改定案では、処遇改善加算の拡充が提案されている。しかし、介護報酬全体が引き下げられ、事業所の収益が大幅に減ることになれば、経営維持のために正規 職員を非正規職員に切り替えたり、職員の新規採用を手控える事態になりかねない。たとえ給与は上がったとしても、業務の過密化などにより、逆に処遇・労働 条件全体が悪化することが予測される。新たな離職の発生にもつながり、ひいては利用者へのサービスの質の低下をもたらすことにもなる。事業の継続が困難に なれば、地域の介護サービス基盤の縮小・解体につながる重大な事態を招く。

 12月19日、日本慢性期医療協会、全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会の介護保険3団体は、「介護報酬の削減には、業界の創意として、断固 反対する」との見解を表明した。私たち民医連に加盟する各地の介護事業所からも引き下げの撤回を求める声が強く挙がっている。介護報酬の引き下げは断じて 容認できない。安心・安全の介護の実現はすべての高齢者・国民の願いである。「介護の質の向上」、「事業経営の安定性・継続性の確保」、「処遇・労働条件 の大幅改善」を実現する上で、介護報酬の引き上げこそ必要である。とりわけ、地方においては、介護事業は雇用の有力な受け皿になっており、介護報酬の引き 上げ・改善は、若者の雇用創出・地域再生の上でも重要な課題と考える。

 平成27年度介護報酬改定に際し、介護報酬引き下げの方針を撤回することを要請する。

(PDF版)

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