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2015年5月7日

「お金なく受診遅れ」56人が死亡― 2014年経済的事由による手遅れ死亡事例調査

 四月二二日、全日本民医連は記者会見を開き「二〇一四年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」の概要を報告しました。二〇一四年、経済的な困難が原因で医療機関への受診が遅れ、手遅れで死亡した人は五六人にのぼりました。

[調査方法]
 二〇一四年一月一日~一二月三一日まで、民医連事業所の患者・利用者で(1)国保料(税)、その他保険料滞納などで無保険もしくは資格証明書、短期保険証発行により病状悪化し死亡に至ったと考えられる事例、(2)正規保険証を持っていたが「窓口負担が払えない」など経済的事由により受診が遅れ死亡に至ったと考えられる事例について、事業所から出された調査票を分析しました。
[概要]
 二四都道府県連から五六事例が報告されました。この調査を開始してから最多だった二〇一〇年の七一件以来、一一年(六七件)、一二年(五八件)、一三年(五六件)と「高止まり」の状態です。
 男女比では男性が圧倒的で八〇%。年齢別では六〇代が最多。三〇~五〇代も二八・五%(一六人)(図1)。世帯構成は、独居が三〇件と過半数でした。
 保険種別は、無保険が二〇件、国保資格書(五件)、短期証(八件)をあわせ正規保険証が無かった人が三三件で六割近くに(図2)。 無保険状態の事例の経緯をみると「国保の保険料が高すぎて退職や失業後に加入手続きせず」が二七%(九件)、「保険料を滞納し資格書になったが、留め置きなどで事実上未交付」が五二%(一七件)でした。
 雇用状況は無職が四六%、年金受給者が二一%、非正規雇用が二〇%でした。また六五歳未満の稼働年齢層では、無職が六五%(二〇件)を占めました。

◆   ◆

 自覚症状が出たり健診などで異常を指摘されるなどしてから、受診するまでの期間は「三カ月以上」が二一人、うち四人が「二年以上」(図3)。次のような事例が報告されました。
▼甲状腺腫瘍の治療を一〇年前に中断した単身女性。パートで低収入だった。体動困難で緊急入院、両側甲状腺がんで八日後に死亡(六〇代、国保短期証)
▼肺がんと診断されたが、借金返済のため働いていた非正規男性。呼吸困難が出てもがまんし、救急搬送時には末期で四カ月後に死亡(六〇代、保険あり)
▼乳がんを自覚しつつ二年間受診せず。貯蓄がなく医療費の自己負担が不安だった。出血して病院に連れられてきたが一カ月後に死亡(六〇代女性、保険あり)
 死因の七一%ががん(悪性新生物)でした(図4)。

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■医療改悪で犠牲増える

 全日本民医連の岸本啓介事務局長は「調査で現れたのは氷山の一角」と強調。
福岡・佐賀民医連が手遅れ事例を毎月蓄積した結果、今回一五件の報告があがったことも紹介されました。
 調査報告のまとめで山本淑子事務局次長は、日本は「国民皆保険」というが実態は違うと指摘。高すぎる国保料の引き下げ、窓口負担の軽減、無料低額診療や生活保護の充実、自治体職員の体制や相談窓口の確保などを提言しました。また、国会で審議中の医療保険制度改革関連法案は「今回報告したような手遅れ死を増やす。廃案を」と訴えました。

(民医連新聞 第1595号 2015年5月4日)

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