声明・見解

2002年4月26日

【声明2002.04.26】市立札幌病院救命救急センターにおける歯科医師の医科研修をめぐる問題について

2002年4月26日
全日本民医連 歯科部

 2002年1月10日、市立札幌病院救命救急センターで研修を受けた歯科医師3名と同センター部長である 医師が医師法第17条違反の容疑で書類送検され、その後2002年2月12日札幌地検は同センター部長を起訴し、3名の歯科医師を起訴猶予処分にしまし た。 起訴した公訴事実は研修医が歯科医師であり医師の免許を取得していないことを知りながら、気管内挿管、静脈路確保、右大腿静脈からのカテーテル抜去、腹部 の触診などを行わせたことが医師法第17条に違反するとしています。医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」とした医師でない者の医 業の禁止条項です。
 3名の歯科医師は歯科医師免許取得後2年間の歯科口腔外科の研修及び最低でも4ヶ月の麻酔科研修を受けた後、歯科口腔外科医として全身疾患を持つ歯科患 者の急変に対応できる技術習得のため、市立札幌病院救命救急センターの研修に応募しました。同病院のレジデント委員会で承認された後、単独でドクターカー に乗車する場合でも、常に無線とPHSで上級医師の指示・指導のもとで研修が行われていました。なんら医師法第17条に問われる内容ではありません。
 あくまでも患者の安全を守ることを大前提にし、いざというときに対応できる能力を身につける研修として救命救急センターで集団的に行われてきている中で の気管内挿管であり、静脈路確保です。単にその行為のみを取り出して医師法17条違反として問うことそのものが「国民の健康な生活を確保する」ことを阻害 することにつながる危険性すらもっています。現に、今回の書類送検、起訴で歯科医師の医科研修を取りやめる病院も出始めているといわれます。
 今回の事態の背景として、これまで広く全国で行われてきた歯科医師の医科領域における研修が適切なガイドラインを持たないまま、現場での熱意と努力で進 められてきたことがあると指摘されています。高齢化がすすむ中で様々な疾患をもつ患者が増加し、医科、歯科における一層の専門分化が進む中で、歯科医師が 歯科治療上で求められる医科領域の能力も変化してきています。歯科医師が国民により安全な歯科医療を提供できるためにも、歯科医師の医科研修はますます必 要になってきています。
 日本口腔外科学会や日本歯科麻酔学会は歯科医師の医科領域での研修制度ガイドラインの策定を提言しています。厚生労働省は関係各学会等との協力を得て、歯科医師の医科研修についてのガイドラインの策定を急いで行うべきです。
 「歯科医師の医科研修を支援する会」も結成され、裁判の支援活動とあわせて、歯科医師の医科研修の充実を目指した活動を開始しています。こうした活動へ の支援を強めると共に、民医連歯科における医科研修の内容作りを進めましょう。

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