くすりの話

2002年10月1日

くすりの話 59 危険な「やせ薬」

Q:中国製やせ薬が大問題になっていますが。

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問題になった中国製「やせ薬」

A:8月15日の時点で死亡者4人を含め全国で745人もの健康被害が出ていますね。厚生労働省の報告によると、問題になっているのは「之素嚢(せんのもとこうのう)」をはじめとする38品目の中国製やせ薬で、甲状腺機能障害や重い肝機能障害が起きています。
 調査の結果、このやせ薬の中には「甲状腺ホルモン」や「(N-ニトロソ-)フェンフルラミン」という化学物質が高濃度に含まれていることがわかりました。
「フェンフルラミン」は、アメリカで1972年に食欲抑制剤として認可され、何百万人もが服用するブームとなった薬品ですが、その後、重い肺高血圧症や心 臓弁の異常を引き起こすことがわかり、FDA(米国食品医薬品局)が97年に回収を指示した薬物です。日本では、もともとその使用は認められていません。
 これまでの調査では、これらの薬物が今回の健康被害の原因という見方が有力ですが、はっきりしたことはまだ解明されていないのが現状です。

Q:安全なやせ薬というのはないのでしょうか。

A: 「ない」とお答えするのが適当でしょう。現在、日本で食欲抑制剤として認可されている医薬品には「マジンドール」という薬剤があります。もちろんこれも高 度肥満症の治療のために処方される薬剤で、「フェンフルラミン」と同じく肺高血圧症や依存症などさまざまな副作用が出ることも知られており、医師のきちん とした管理の下で使われないと危険な薬剤です。
 短期間での目覚ましいダイエット効果をうたい文句にした健康食品のなかには、きちんと成分のわからない、きわめて危険なものが含まれているのが実情で す。今回問題となった中国製やせ薬のほかにも、急激な血圧上昇や脳出血などを起こす危険性が指摘されている「エフェドリン」を主成分としたダイエット補助 食品などが広く出回っており、その種類や数は正確に把握されていません。
 一般に副作用がなく安全と思われている漢方薬やハーブ製品なども、必ずしも安全とはいえず、また他のくすりとの相互作用で体に有害な影響を及ぼすものも あります。使用の前には、必ずかかりつけの薬局薬剤師に相談することをお勧めします。
 目立った効果が現れるまでには時間がかかるかも知れませんが、適度な運動を行ないながら、ミネラルやビタミンなど体に必要な成分を摂りつつカロリー制限 をしていく方法が、もっとも安全なダイエットといえるのではないでしょうか。

いつでも元気 2002.10 No.132

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