事業所のある風景

2015年12月16日

民医連事業所のある風景 青森/健生黒石診療所/いのちと暮らしを守る思いをひとつに

 健生黒石診療所のある青森県黒石市は、津軽地方の南側に位置する人口3万人の小さな市です。東に八甲田山を望み、四季の移ろいを二十四節気ごとに楽しめる自然豊かな土地です。江戸時代に弘前藩(津軽藩)の支藩として歴史が始まり、現在でも伝統文化が大切に継承されています。日本の道百選にも選ばれ、藩政時代そのままの姿を残す“こみせ通り” の軒並みが歴史を感じさせます。その場所で行われる“黒石よされ”は阿波踊り・郡山おどりに並ぶ日本三大流し踊りであり、約2000人の踊り手の寸分違わぬ舞の迫力には、市民の文化継承の強い意思と協同の力を感じます。

 「医療を民衆の手に」

  1988年に地域住民の多年の願望だった診療所として健生黒石診療所は開設されました。診療所立ち上げは、医療機関開設を望む2つの生協の組合員が共同し多くの市民を巻き込んだ運動であったようです。

 津川武一『医療を民衆の手に』を原点とする「津軽保健生協」と、“皇民から農民へ”の医療を展開してきた「津軽医療生協」の組合員が、法人の垣根を越えて、いのちと暮らしを守る思いをひとつに願いを実現させました。以来27年間、紆余曲折はありながらも診療所を中心として組合員を拡大し、地域の医療福祉要求実現に尽力してきました。

 地域のヘルスプロモーションを追求 

 2010年から現所長である坂戸慶一郎医師が着任し、外来はもちろん在宅医療にも力を注いできました。金銭面や身体面で〝患者になれない患者〟の存在を実感し、その人らしい生き方・治療方針を人権から捉え直し、法人内外の多職種チームで日々追求しています。特に看護師の役割は大きく、患者への積極的な関わりが医療面での貢献はもちろん、安心・信頼へとつながっています。看護師が輝ける診療所であり、事務職や研修医が人間として発達できる教育診療所であること、さらには患者の医療における

“home”であることをめざしています。そのために地域の人々と共同し、よりよい医療・福祉の実現のため努力しています。自治体交渉ではそれまでかなわなかった他自治体での健診が認められました。また、予防接種の自己負担低減が実現しています。健康教室や小学生医療体験など、事業以外の地域貢献活動を積極的に行い、地域のヘルスプロモーションを追求しています。 

めざす医療への挑戦と実践を 

 診療所の理念である「プライマリ・ヘルス・ケアの発展を通じて、患者・組合員・地域の人々の健康と生活をサポートする」活動は多くの関係者の連携を強め、着実に個人・家族・地域の信頼を得ています。先日、看取らせていただいた患者さんのご家族が新聞のお悔み広告に、診療所への感謝の言葉を綴っていたことには胸を打たれました。そういった思いに応えていけるように、これからも私たち民医連のめざす医療への挑戦と実践は続いていきます。

健生黒石診療所 事務長 泉谷雅人)

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