副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2016年4月28日

【新連載】8.抗パーキンソン薬の副作用 

麦角系;ブロモクリプチン(パーロデルなど)、ペルゴリド(ペルマックスなど)、カベルゴリン(カバサールなど)
非麦角系;タリペキソール(ドミン)、プラミペキソール(ビ・シフロール・ミラペックスLAなど)、ロピニロール(レキップ・レキップCR)、ロチゴニン(ニュープロパッチ)

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 抗パーキンソン薬には、レボドパ製剤、ドパミンアゴニスト製剤、アマンタジン、抗コリン製剤、ドロキシドパ、セレギリン、エンタカボン、ゾニサミドなどがあり、これらの薬剤でみられる副作用で頻度の高いものに、吐気・嘔吐などの消化器症状、起立性低血圧、幻覚・妄想、日中過眠(車の運転に注意)、足背・下腿浮腫などが挙げられます。
 副作用モニター情報では、過去に「メシル酸ペルゴリドによる下腿浮腫」(<259>2006年12月)と「パーキンソン治療薬による突発的睡眠の副作用に警告」(<286>2008年4月)を取り上げました。本稿では、抗パーキンソン薬のなかでもドパミンアゴニスト製剤の「突発的睡眠」と「下腿浮腫」、および「衝動抑制障害」の副作用について取り上げます。

1、突発的睡眠の副作用について
 ドパミンアゴニスト製剤は、脳内のドパミン受容体に作用してドパミン様の薬理作用を示し、麦角系と非麦角系に分類されます。麦角系には、ブロモクリプチン(商品名パーロデルなど)、ペルゴリド(商品名ペルマックスなど)、カベルゴリン(商品名カバサールなど)があり、非麦角系には、タリペキソール(商品名ドミン)、プラミペキソール(商品名ビ・シフロール・ミラペックスLAなど)、ロピニロール(商品名レキップ・レキップCR)、ロチゴニン(商品名ニュープロパッチ)があります。
 このうち麦角系製剤は長期の使用で心臓弁膜症をきたすことがあり、原則として非麦角系で治療を開始し、その効果が不十分または忍容性に問題がある場合のみ使用されるようになりました。
 非麦角系ドパミンアゴニストによる突発的睡眠については、2008年3月の医薬品・医療機器安全性情報No,245で注意喚起が行われ、添付文書の【警告】の項に「突発的睡眠により自動車事故を起こした例が報告されているので、患者に本剤の突発的睡眠及び傾眠等についてよく説明し」という一文が 追加になりました。
 2015年7月現在で、改めて直近3年間の全ての抗パーキンソン薬の副作用モニター報告の抽出を行いましたが、この中で突発性睡眠の報告は、プラミペキソールで4件(うちレボドパ製剤併用2件)、ロピニロールで3件ありました。レボドパ製剤単独での報告も1件ありましたが、非麦角系製剤に多くみられています。
 報告の中では、プラミペキソールのメーカー情報として、「2014年8月末までの市販後調査では、ビ・シフロール65件、ミラペックスLA5件で、発生機序は解明されていないが、ドパミン受容体の過剰刺激により起こりうるとされている。時期については用量を増やす際に比較的多く発生するが、服用中どの時期でも起こる可能性は充分にある。また一番早く発現した例は投与開始後1週間から10日である一方、投与開始後1年以上経過したのちに発現した例もある。その中には傾眠や過度の眠気のような前兆を認めなかった」また、「以前は非麦角系製剤で特徴的といわれたが、麦角系やレボドパ単独でも発症しうることがしられている」との記載がありました。ひき続き注意の必要な副作用です。

2、下腿浮腫の副作用について
 2006年のモニター情報<259>では、メシル談ペルゴリドを取り上げましたが、今回(2015年7月)あらためて直近3年間の副作用を抽出したところ、カベルゴリン(商品名カバサールなど)で1件、プラミペキソール(商品名ビ・シフロールなど)で2件、アマンタジン(商品名シンメトレルなど)で1件の浮腫の副作用報告がありました。

【症例】70代男性 1年以上前から、プラミペキソール2.25mg/日服用中の患者、ADL(日常生活動作)低下によるリハビリ目的で入院。入院時より下肢の浮腫を認める。薬剤による副作用を疑い、プラミペキソールからブロモクリプチン10mgへ変更。変更後浮腫改善、体重も1kg減となった。

 報告者の意見では、「発症機序は不明だが、ドパミンアゴニストが循環系に影響を及ぼすことが考えられている。今回はアゴニストの切り替えで改善したが、切り替えを行っても効果が見られない場合がある。発現期間は比較的長く1年という傾向である。対処方法に関しては、減量・変更・中止を考慮する。なお変更によっても変わらない場合もあり、最終的には中止ということになる。」との記載がありました。

 また、90代男性のプラミペキソールの両足浮腫の症例での報告者の意見では、「プラミペキソールに伴う副作用とした下腿浮腫とその危険因子に関する臨床研究がアメリカで報告されている。フィラデルフィアの退役軍人病院にて行われた研究で、273名の患者がプラミペキソールを服用していた。このうち38名(16%)に下腿の浮腫が認められた。検討した危険因子としては特発性パーキンソン病であること、冠動脈疾患の既往、糖尿病の既往の3つが判明した。内服量と発生率および重症度については関連がなかった。治療開始後最初の1年間に出現する危険性は7.7%で、冠動脈疾患の既往のある患者ではより進行が早かった。結論として下腿浮腫はプラミペキソール内服中の患者に少なからずみられる副作用であり、冠動脈疾患の既往は危険因子として重要である。」との記載がありました。

3、衝動抑制障害の副作用について
 レボドパ製剤やドパミンアゴニスト製剤の副作用として病的賭博の副作用が知られています。2013年10月の使用上の注意の改正で、「病的賭博、病的性欲亢進」の記載に加え、「強迫的購買、暴飲」が追加となっています。民医連の直近3年間の副作用抽出症例のなかにも衝動抑制障害の報告が1例報告されていました。

【症例】60代女性 動き悪くロピニロール徐放錠2mg服用開始。ビ・シフロール1mg継続併用。ロピニロール徐放錠増量2mg→4mg→6mgに伴い、食べ物への欲求が抑えられない。買い物で、商品を篭からだしてもまた篭に戻してしまう。食べたいという欲求を抑えられない。との訴えがみられた。開始49日目にロピニロール中止。中止14日後には食欲がおさまった。その後異常な買い物衝動はなし。

 レボドパ製剤又はドパミンアゴニスト製剤を服用することで、ドパミンによる精神系の過剰刺激や特に視床下核の脳深部刺激によって、脱抑制性の病的精神状態に陥る事があります。この脱抑制性の病的精神状態とは具体的には、病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルをくりかえす状態)、買い物依存、性行動亢進、過食、爆発的攻撃行動など衝動抑制障害と呼ばれる状態、他人から見て何も今する必要のないことに没頭して寝食や服薬、排泄を忘れる反復常同行動、ドパミン作動薬を過剰に求めるドパミン調整異常症候群などをいいます。
 薬剤の減量調整や中止(運動症状の悪化を考慮)により回復しますが、これらの副作用は本人には気付きにくいこともあり、家族等にも症状について説明することが重要となります。頻度は少ないものの注意すべき副作用です。

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画像 東京民医連 みさと協立病院薬剤師
http://www.tokyo-kinikai.com/misato/m04/03.html

**新連載ご案内【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や350の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行ってきました(下記、全日本民医連ホームページでご覧になれます)。今般、【薬の副作用から見える医療課題】として疾患ごと主な副作用・副反応の症状ごとに過去のトピックスを整理・精査し直してまとめ連載していきます。

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以下、58まで連載予定です。

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