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2016年6月7日

熊本地震から1ヵ月半 今後の課題は― 藤末衛・熊本地震対策本部長にきく

 熊本地震から一カ月半になります。全日本民医連は、本震後すぐ支援に入り、熊本民医連の医療・介護、職員の健康を守るべく活動してきました。今なお避難生活を送る被災者が多い中、今後、何が必要になってくるでしょう。全日本民医連の熊本地震対策本部長をつとめる藤末衛会長に聞きました。(土屋結記者)

東日本での教訓を

 発災直後は、現地の被災者でもある職員が大奮闘。翌日からは九州を中心に、翌週からは全国支援が続々と入り、被災地での活動をささえました。
 五年前の東日本大震災を教訓に、今回初めてのとりくみもありました。まず、MMAT(民医連災害支援チーム)委員が災害医療のコーディネーターとして、対策本部の立ち上げを支援しました。また、職員の健康を守るチームが早期に結成され、現地職員と支援者の心身の健康を守る活動をすすめました。現地の事業所管理者は、診療や介護の継続と同時に被災した事業所の復旧に責任を持ち、さらに加えて支援の受け入れや組み立てにもあたらなければならず、管理者をささえる人的支援にも意識的にとりくみました。
 「いのちに寄り添い、患者、利用者、地域を守り、職員も守る」のスローガンのもと、全国で心一つに奮闘できた一カ月半でした。

時が経ち浮かぶ課題

 今、被災者が抱える中心課題は「住居の確保」です。家屋の被害が予測以上に多く、さらに増えそうです。家屋の被害評価が間に合わず、生活再建に必要な「り災証明書」の発行や仮設住宅建設などに関わる行政手続きも遅れています。
 避難所の環境の改善が遅いことも特徴です。一カ月経っても提供される食事はおにぎりやカップ麺などという実態もあり、東日本大震災と比べても遅れています。「震災後風呂は一回だけ」という人も。厚労省から改善を求める指示が自治体に出ています。
 避難所に残っている人は、自宅が倒壊するなど帰る場所のめどがつかない人や、高齢者や障害者などの災害弱者であり、かなり困難な状況にあると考えられます。避難生活の長期化で、震災関連死をはじめとする健康被害も増えています。仮設住宅や民間の賃貸住宅を利用した「見なし仮設」の確保が急がれます。
 また、医療・介護施設が被災し、すぐに機能が復旧できない施設も少なくなく、被災地域の医療・介護の機能低下を招いています。
 熊本市では、地域の急性期医療を担う熊本市民病院(約五五六床)に被害が出て、再建まで二年程度は診療が制限されるようです。そのため、近くにあるくわみず病院には、震災前より求められる役割が増えた状態が続きます。また、多くの介護施設も被害を受け、介護を必要とする人たちの行き場が足りません。

今後の支援の柱は―

 今後の支援の柱は、「医療・介護ネットワークの再構築」と、「生活再建のための地域支援」です。
 地域医療の維持のために、くわみず病院を中心とした医療支援、また、介護施設への応援にも力を入れます。住居が半壊以上の被害を受けた現地の職員も約五〇人にのぼるなど、被災した職員たちの応援も続けなければなりません。
 また、医療・介護のネットワークの再構築は、居住地から離れた場所へ避難したり、「震災後ケアマネと連絡がとれない」など、つながりが切れてしまった避難者がおり、欠かせない課題です。
 避難者の健康状態を改善するには、住居の安定が何より大切です。医療機関としての支援とともに、「住宅の確保を急げ」と、行政に伝える活動にも、熊本民医連が関われるよう支援をしていきます。
 雇用問題も含め、生活再建の相談活動も求められるでしょう。これまでの災害支援と住民運動の中で、生活を立て直すための法律は次第に整備、追加されてきました。しかし、被災者にその内容が周知されていなかったり、自治体職員も十分理解していないなどの問題もあります。法律の専門家の協力も得ながら、運動化や個々の支援にとりくんでいく考えです。
 長期的な支援、運動になります。あらゆる人たちと協力し、被災者の健康と生活をまもる支援を続けましょう。(五月二〇日、理事会アピール参照)


<被害状況>(5月14日時点)
死亡49人、関連死疑い19人、安否不明1人、負傷者1717人、避難者1万480人
建物損壊8万2884棟
被災した医療機関450施設、うち20施設が診療を縮小
7つの基幹病院のうち、3つが機能縮小か停止
介護施設は4割損傷、11カ所が使用不能

(民医連新聞 第1621号 2016年6月6日)

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