声明・見解

2003年4月5日

【声明2003.04.05】地方選挙にあたっての私たち民医連の要求

2003年4月5日
全日本民主医療機関連合会事務局長 長瀬 文雄

 全日本民医連は事務局長名で次の要求を発表しました。

私たちをとりまく情勢

 いま、小泉内閣による悪政は、不況を深刻化させ、国中が倒産・廃業・失業・リストラの嵐に見まわれています。この危機的な状況を打開するには、社会保障の抜本的な拡充と日本経済を支える中小企業や家計への支援を思い切ってすすめ、冷え込んだ消費を改善することです。
 しかし小泉内閣は、医療改悪一・五兆円をはじめ四兆円もの国民負担を増やそうとしています。また、アメリカのイラク攻撃に協力し、二兆円前後の膨大な戦 費支援も報道されています。
 こうした悪政の仕組みを断ち切って、平和と人権・いのちと暮らし・医療と福祉がゆたかに広がる社会への転換をすすめましょう。

地方自治体と医療・福祉の課題

 長引く不況のもとで将来への不安が強く、福祉や医療、くらし優先の政治を求める世論が高まっています。長野県や徳島県、熊本市や尼崎市での住民本位の自治体づくりは、税金の使い方を変えるだけで、地方政治を変えることができることを示しています。
 今回のいっせい地方選挙は、安心して暮らせる地域づくりをすすめるチャンスです。

私たちの要求と地方選挙への立場

 私たちは「いつでも、どこでも、誰でもが安心して利用できる医療・福祉」の充実を求めています。在宅酸素 の患者さんが一〇倍もの負担増で酸素療法を中止する、利用料が高くて必要な介護サービスを利用できない、こうした悲しい事例に直面するたびに、政治や行政 のあり方に矛盾を感じます。
 いっせい地方選挙にあたり、地方自治体が住民のいのちとくらし、福祉を守る役割を果たすよう、私たちは日々接する患者さんや地域のみなさんの声や実態を ふまえ、つぎの要求をかかげて運動をすすめます。

1.健保三割負担の実施凍結・中止すること
 健保改悪の実施を凍結すること、保険料負担の引き上げをもとに戻すこと、この間、減らされてきている政管健保への国庫補助をもとに戻して健保財政の安定を国の責任でおこなうこと

2.高齢者医療の一割負担を中止すること
 高齢者負担を定額負担に戻すこと、当面、受領委任払いなど利用者負担を軽減すること

3.誰もが利用できる介護保険制度に
 国庫負担を二五%から三〇%に引き上げて、保険料の大幅引き上げを中止すること。サービス整備と保険料アップがリンクする介護保険制度を改善し、必要なサービス充実が住民負担の心配なくできるよう改善すること。

4.年金支給カット、消費税増税をやめること
 きびしい不況のもとで年金暮らしの方がたへの「年金カット」を中止すること。大企業優先の減税や消費税増税計画を中止し、国民のくらしを守ること。

5.イラクへの武力攻撃に反対し、平和を守ること
 国内外で高まる世論に応え、アメリカによるイラク攻撃に平和憲法を持つ国として反対すると共に、アメリカへの戦費支援をいっさい行わないこと。

1.私たちの求める地方政治の基本

 

(1)ムダな公共事業を見直し、医療・福祉・くらし優先の税金の使い方に変える
 いま、福祉やくらし、教育など住民生活に直結する事業へ要求が高まっています。税金の使い方を住民本位に転換していくこと、地場企業の育成など地域経済の活性化をすすめること。

(2)高齢者にも障害者にも優しい、福祉優先のまちづくりをすすめる
 高齢者や障害者が安心してまちに出かけられる交通システムやバリアフリーの整備、福祉パス、障害者タクシーなどの充実をすすめること。

(3)環境をまもるとりくみをすすめる
 環境破壊につながる開発や原発推進を見直し、環境をまもること。また環境オンブズパーソンや環境に優しいゴミ処理・リサイクルなど住民参加型の運動や自然エネルギー利用など地域おこしのとりくみを重視すること。

(4)押しつけ合併をやめ、住民の顔が見える自治体づくり
 市町村合併問題は住民の暮らしや行政施策に関わる問題です。自治体合併では補助金の削減、地方自治の縮小と新たな住民負担増などの問題があります。住民の顔が見える福祉やくらしをささえる自治体めざして、住民本位のまちづくりをすすめること。

(5)住民の声をいかしたまちづくり
 まちづくりへの地域住民の声を反映し、住民参加ですすめましょう。とくに、地域の福祉や保健、健康づくり、子育て、教育などの分野での住民参加を重視します。

2.医療・保健の要求

 

(1)国保の改善を早期にすすめること
 負担能力をはるかに越える国保料の値上げをストップし値下げすること。そのために現行三八・五%の国庫負担をもとの四五%に戻すように国に求めること。
 国保加入者の受療権を脅かす資格証明書・短期保険証の発行をやめること。国保料減免制度を拡充すること。また、国保窓口負担の減免制度を広げること。

(2)高額な医療費を要する在宅療養患者へ公費助成を拡充すること
 身体障害者等級三、四級の在宅酸素療法患者でも現物給付による医療費助成負担を行なうこと。電気料の助成を行うこと。
 在宅の患者さんの高額な窓口負担を軽減すること。

(3)乳幼児医療制度の拡充をすすめる
 子育て支援の柱として、全ての自治体で早期に就学前医療費の助成を行い、段階的に小学校卒業時まで広げること。国の乳幼児医療制度創設を求めること

(4)健診および保健・予防活動の充実へ

  1. 自治体健診の充実
     自治体健診(成人健診・高齢者保健事業健診・各種ガン検診)の充実と利用者負担の軽減・無料化をはかり、住民の健康づくりをすすめること。
  2. 予防給付の拡大をすすめること
     インフルエンザ予防接種の無料化、肺炎球菌予防接種の無料化などをすすめること。
  3. 地域での健康づくり活動を支援
     健康づくり活動を進めるとともに、住民組織の健康づくり活動を支援すること。
  4. 保健所の充実・強化
     地域での総合的な保健活動をすすめるために、必要な専門職の確保をすすめ、地域の医療・保健・福祉のコーディネーターとしての保健所機能の充実をはかる こと。

(5)難病医療を充実すること
 国の特定疾患事業縮小に反対し、自治体独自の難病対策を確保・発展させること。

(6)被爆者医療の改善をすすめること
 高齢化しつつある被爆者の健康管理を充実させること。

(7)地域医療の体制充実を行うこと

  1. 自治体病院の機能の充実
     住民の健康や医療を守るために、自治体の助成をつよめ、移転・統合・委譲などをしないこと。住民要求の高い「女性外来」などの充実・実施をはかること。 病院経営の厳しい状況下でも住民負担(差額など)を拡大しないこと。
  2. 救急医療体制の確保
     小児科救急医療など夜間・休日の救急医療について、自治体病院や民間病院・開業医療機関が連携し、救急医療体制の整備をすすめること。

3.介護・福祉の要求

 

(1)誰もが利用できる介護保険制度にすること

  1. 保険料の減免拡大
     保険料の減免を拡大すること。七段階区分化による低所得者対策も充実させること。
  2. 安心してサービスを受けられる利用料にすること
     在宅サービス利用料を当面三%の負担に軽減すること。施設入所利用者の生活費負担の軽減を行うこと。
  3. サービス基盤の整備を行う
    (a)特養ホームづくりをすすめ、二二万人の待機者の解消をはかること。老健施設、介護療養施設など、地域の住民の要求に応じた入所施設の整備をすすめる こと。
    (b)宅老所、グループホーム、ケアハウスなど痴呆や要支援の高齢者の利用施設を増やすこと。これらへの地域のNPO事業活動を支援すること。
  4. 生活支援活動を広げる
    地域福祉の充実をすすめ、高齢者が元気に地域で暮らせるように、高齢者・障害者を支える助け合い活動の事業化を広げ、自治体として支援すること。

(2)生活保護制度の改善・充実
 生活保護受給者と申請者の人権を保障する申請・受給などの運用の改善と必要な財政措置を行うこと。

(3)公的責任で障害者支援費制度をスタートさせること
 四月実施の障害者支援費制度スタートにあたり、現在のサービス利用が下回ることなく、利用者が安心してサービスの利用ができるよう、公的責任で運用する こと。障害者福祉サービスの基盤整備をはかり、必要な財政確保を行うこと。

(4)ホームレス問題の改善をはかること
 行政の責任で調査を行い、実態把握と生活保護適用、健康診断実施などの人権を尊重した対策を実施すること。

(5)安心して地域でくらせる地域福祉の充実を
 敬老祝い金や福祉パス、緊急通報システムの整備、待機児の増加する保育体制や学童保育の整備と充実をすすめること。

 

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