声明・見解

2003年4月8日

【声明2003.04.08】医療事故を調査する第三者機関の創設を要望します

厚生労働大臣 坂口 力 殿 2003年4月8日
  全日本民主医療機関連合会  会 長  肥田 泰

医療事故を調査する第三者機関の創設を要望します

 連日のように、医療の場での医療事故や事件の発生がマスコミを通じて報道され、多くの国民、医療関係者が心を痛めています。不幸な医療事故や事件をなく すことは、国民の切実な願いです。医療事故をなくすために、医療関係者が率先して役割を発揮するとともに、国、自治体など行政機関あげてとりくまねばなら ない国民的課題と考えます。
 医療事故が起こった場合、その事故の原因を究明し、教訓を国民的に共有し再発を防止することが必要です。そのために医療事故を調査する公正・中立な第三者機関の創設を提案します。
 現状では、医療事故が起こった場合に報告する対象は、保健所など行政機関、医師法21条との関係で警察が対象となる場合もあります。また、相談窓口とし て各都道府県に設置されている医師会の医事紛争委員会のような主に賠償を扱う機関もあります。それぞれが重要な役割を果たしていますが、どの機関をとって みても、紛争の処理や刑事性の判断などが主で、医療事故の原因を究明し再発を防止することを目的としたものではありません。 
 現代の医療は医療行為そのものが、たいへん複雑多岐となり、また病院を中心に医師、看護師、薬剤師、検査技師等々多くの専門職種からなる組織医療となっ ている以上、「だれが起こしたか」ではなく、「なぜ、起きたのか」、「再発防止のためには、なにが必要なのか」の立場から、人、情報、システム、器械など 多面的に徹底した原因究明と、一つひとつの事例から、教訓を導き出し、普及することが重要です。
 医療事故が発生した場合、医療機関が自主的に調査検討するのは当然でが、事故の当事者の調査だけでは不十分です。これまでも事例よっては外部調査委員会 が個別に設けられてきました。しかし、それだけでは不十分です。
 医療事故調査を主目的とする機関を公的な制度として確立する必要があります。事故調査の第三者機関としては航空・鉄道事故調査委員会などの例がありま す。医療事故に関してもイギリスやアメリカのように海外に相当する機関があります。
 日本ではジャーナリストの柳田邦男氏や東京都病院協会や日本弁護士会などの提言があります。また、外科系の15学会連名の声明にも中立機関設立の要望が出されています。
 第三者機関を、医療をよくし事故を減らす使命を果たせるものにするため、目的・権限・構成や他の法律や機関との関係等々を議論し、国民的合意が取れるも のに練り上げる必要があります。事故の補償まで扱うのか、刑事免責をどうするか等議論が必要です。
 医療機関各々が患者や社会に対する情報開示と説明責任を医療倫理として確立していくことが、医療の透明性を増し日本の医療を民主的に発展させるために必要です。
 全日本民主医療機関連合会は、過失責任や懲罰を目的としたりするのではなく、医療事故の構造や要因を明らかにし、再発防止、医療事故をなくすための提言 や勧告を行う、公正中立な機関が必要であると考えています。医療事故の公開が原則である以上、報告先も第三者機関とすべきと考えます。そこでは、医療事故 情報やインシデントデータはじめ医療の安全性に関わるあらゆる情報の収集、分析とイエローレターのような啓蒙が出来る安全情報センターの機能が必要と考え ます。設置にあたって、当然ながら予算措置が必要です。
 厚生労働省においても第三者機関の設置を検討され、「医療にかかわる事故事例情報の取り扱いに関する検討部会」で、「特定機能病院などに報告を義務付け る」など報告を義務付ける範囲、報告すべき事例の範囲などを検討されていると聞きおよんでいますが、(1)報告した病院・個人が、刑事訴追など法的処分に おいて不利益をこうむらないようにすること、(2)診療報酬の減額などのペナルティによって報告を強要しないことなどが重要です。
 あわせて、医療事故被害者の相談や救済、援助などの活動を行う機関の設置も検討されるべきであると考えます。
 私たち全日本民主医療機関連合会は、2002年12月、加盟する医療機関で起こった医療事故や事件を踏まえ、医療事故をなくすために、『「医療事故」 「事件」と私たちの立場』の見解をまとめ、発表しました。医療事故問題の根本的な解決にむけて、国民的議論の一助になればと考え、討議をすすめています。
 他の諸団体・個人と意見交換・協議をすすめ、第三者機関創設のための努力をすることを表明し、要望とします。

以上

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