MIN-IRENトピックス

2016年10月4日

MMAT研修交流集会に150人 「災害対策本部」とは―― 設置や運営を学ぶ 

 全日本民医連は九月一七~一八日、東京で今期第一回MMAT(エムマット)(Min-iren Medical Assistance Team)研修交流会を開き、四〇県連から約一五〇人が参加しました。県連の災害対策本部の役割や具体的な運営について学びました。

 冒頭、全日本民医連の藤末衛会長があいさつ。「M7レベルの地震はいつどこで起こっても不思議ではなく、救援は超高齢化社会と貧困と格差が広がる中での活動となる」と指摘。民医連の災害救援活動の核となるMMATのあり方を深めようと呼びかけました。

■対策未整備多い

 全日本民医連MMAT委員会の阿南陽二委員長(全日本民医連副会長)が「民医連の被災地支援とMMATの活動」と、県連と事業所を対象に行った事前アンケートの結果を報告しました。
 災害対策マニュアルが「ある」県連は一六にとどまり、「ない」と答えた県連は半数以上。「ある」県連のうち、そのマニュアルを使って災害訓練を実施したのは五県連のみでした。事業所では、病院の七六%、老健施設と特養ホームの約六割が災害対策マニュアルが「ある」と答えていますが、有床診療所では「ある」が三割にとどまっています。
 阿南さんは、民医連の災害救援活動は「“困ったところに民医連あり”という民医連綱領の精神そのもの」と強調。「急性期だけでなく亜急性期も」「医療だけでなく生活支援も」という視野の救援活動を意識することを強調しました。

■情報の収集・分析がカギ

 小網孝志委員(新潟・下越病院)が「災害時の基本対応」を報告。災害時医療の体制を表したCSCATTT(下図)を紹介し、災害情報収集・分析、コーディネートの詳細を紹介しました。
 「災害対策本部の作り方」をレクチャーしたのは郷古親夫委員(宮城・坂総合病院)。「大災害が発生した時、全日本民医連と各県連は、“災害医療コーディネート”を任務に災害対策本部を立ち上げる」ことを確認。「医療の継続」「避難生活の環境改善と疾病の予防」「日常の医療体制の復旧」「被災者の日常生活と健康の回復」が目的となると強調しました。
 CSCA(医療管理項目)の確立はTTT(医療支援項目)の確立より優先されること。全日本民医連と県連の対策本部の組織機構図の基本形を示し、役割ごとの任務や確認事項を記録したアクションカードやクロノロジー(経時的活動記録)の説明をしました。
 被災地県連の対策本部の活動については、坂総合病院のマニュアルや訓練を参考に説明。被害状況や事業所の性格、規模の違う複数の病院から支援を求められたとの想定で、収集すべき情報と分析、限られた支援者や物資をどうコーディネートするか、考えました。
 熊本民医連からも、地震発生直後から対策本部の動きや課題などが報告されました。

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■「職員を守り抜く」大切さ

 二日目は、九州社会医学研究所の田村昭彦所長(全日本民医連理事)が「大災害時に医療、介護福祉職員の健康を守るとりくみ」と題して講演。「被災地の職員は被災者でもある。心身の病気の発症リスクは高まる。予防的対策は医療安全にも重要」と話しました。田村さんは本震の三日後に熊本に入り、被災地の職員全員にストレストリアージを実施。フォローが必要な職員は受診やカウンセリングにつなげ、全職員に計画的な休息を促しました。支援者へのヘルスケア、送り出す側の配慮にも触れました。
 田村さんは、熊本民医連が地震発生一週間後に「職員の健康を守り抜く」と宣言したことが重要だったと強調。不調者の早期発見、治療に比べ遅れがちな予防対策、過重労働対策にも言及しました。
 一七班でワークショップを実施。(1)対策本部に必要な情報を記入するフォーマットの作成、(2)送り出す支援職員のメンタルヘルス対応、の二点で議論しました。
 長崎県民医連の國貞由美子さん(看護師)は、「対策本部の役割が実践的に理解でき、対応の遅れを痛感した」と話していました。
【参考】『民医連医療』誌9月号で災害救援活動を特集しています。

(民医連新聞 第1629号 2016年10月3日)

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