声明・見解

2003年6月20日

【声明2003.06.20】労働者派遣法改正に抗議し、安上がりの医療を広げる医療資格者の労働者派遣解禁に強く反対する

2003. 6.20
全日本民主医療機関連合会
会長  肥田 泰

 6月、政府・連立与党は「労働者派遣法一部改正」の成立強行を行った。この派遣法一部改正は派遣労働の規制緩和をすすめ、常用労働者をへらし、雇用や収 入の不安定な派遣労働の置き換えを広げること、「物の製造業」への派遣を解禁し劣悪な労働条件での派遣労働者を増大させる事を狙ったものである。私たち は、劣悪な労働条件を広げる今回の「改正」に抗議するものである。
 また、3月には特養ホームを中心に福祉分野への医師などの医療職の派遣解禁が閣議決定のみで実施が決まった。ゆきとどいた医療と福祉を願う国民と医療・ 福祉の専門職の願いを踏みにじるものでり、私たちは強く反対してきた。
 さらに、この「派遣法改正」成立を受けて、厚労省の「医療分野における規制改革に関する検討会」はこの12日、医療機関への医療専門職の労働者派遣につ いて「紹介予定派遣」での解禁の方向を決めた。同会ではこれまで「チーム医療に支障が生ずる」との立場で解禁に慎重であったが、今国会での改正労働者派遣 法での「紹介予定派遣」での派遣就業前面接などでこうした障害がなくなったと判断した、としている。

 しかし、医療専門職の派遣労働問題は、今日の一般労働力需要の多様化の進行と同次元での議論は全くなじまない。それは医療分野の労働のあり方が、様々な 専門分野の職種の人たちによる協働・チーム医療によって日常的、継続的、専門的に行われており、この体制のもとで国民の生命と健康に責任をもつているから である。
 とくに、「医療の安全性の確保」が喫緊の重要な課題になっている中で、一時的・臨時的な専門派遣職員の医療現場での受け入れは、日常的・継続的なコミュ ニケーションの確保が保障されない側面が強く、国民の求める「安全・安心の医療の提供」の要望に応えられるものではない。
 さらに問題な点は、派遣労働者に関わる医療事故について検討会報告では、医療事故などの発生責任は医療機関にある、としている。私たちは、毎日の医療現 場において医療事故を起こさないよう、安全な医療の提供のために日常的な努力を行っている。安全な医療をめざす取り組みの前提は、専門職員の協働・チーム 医療の充実であるが、派遣労働体制はこうしたチーム医療の前提を危うくする可能性も含むものである。

 厚生労働省がまとめた、平成13年度の医療監視に基づいた医師・看護師等の適合率では、医師は72.6%である。北海道・東北地域は51%と低く、医師 の確保の困難な地域といわれる。「派遣労働の問題は医療従事者の不足を補う役割もある」との考えも一部にあるが、医師不足・看護婦不足を解決することこ そ、行政の本来の責任である。 
 公共的な医療体制の確保という国の責務を投げ捨てて、民間の派遣会社による専門職派遣で対応すること自体が、安上がりの医療体制を拡大する点でも大きな 問題である。わが国の医師・看護婦数は年々増加しつつあるが、欧米諸国との比較では医師数67%、看護職員82%の配置で不足している。こうした医療専門 職の少ない状況が、安全な医療の確保の大きな障害となり、患者への必要な情報提供などゆきとどいた医療を提供する上でも障害となっている。

 私たちは、国民のいのちと健康を日々守る医療機関としても、医療の営利化に反対し、安全・安心の医療体制を確立する立場からも、医療専門職の労働者派遣 に強く反対し、国の責任で安全な医療体制に必要な専門職の養成と確保を求めるものである。

以上

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