副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2016年11月16日

【新連載】17.トリプタン系薬剤(偏頭痛治療薬)の副作用について

スマトリプタン(商品名:イミグランなど)、ゾルミトリプタン(ゾーミックなど)、エレトリプタン(レルパックス)、リザトリプタン(マクサルト)、ナラトリプタン(アマージ®)

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 日本で発売されているトリプタン系薬剤には、(1)スマトリプタン(商品名:イミグランなど)、(2)ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミックなど)、(3)エレトリプタン(商品名:レルパックス)、(4)リザトリプタン(商品名:マクサルト)、(5)ナラトリプタン(商品名:アマージ®)の5製剤があり、スマトリプタンは点鼻剤と注射剤も市販されています。
 作用発現時間と持続時間に違いがあり、速効型・短時間型にスマトリプタンとリザトリプタン、中時間作用型にエレトリプタンとゾルミトリプタン、長時間作用型にナラトリプタンが分類されています。
 片頭痛発作はセロトニンとの関連性が強く、セロトニンを投与することで片頭痛が治まります。トリプタンはセロトニン受容体サブタイプの5-HT1B/1D受容体に選択的に作用する作動薬です.血管壁の5-H1IB受容体に作用し,拡張した硬膜血管を収縮させ,同時に三叉神経終末の5-HT1D受容体に作用し,終末からの神経原性炎症を惹起するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin generelated peptide:CGRP)の放出を抑制します.過敏になっている三叉神経血管系を沈静化させ,片頭痛発作を頓挫させると考えられています.

 民医連副作用モニターの過去副作用事例検索では、スマトリプタンで42件、ゾルミトリプタンで19件、リザトリプタンで2件の報告がありました。報告された主な副作用は、めまいやしびれ、頭重感、倦怠感、脱力感、眠気などの中枢神経系の副作用、悪心・嘔吐などの消化器系の副作用、動悸・一過性の血圧上昇など循環器系の副作用のほかに、胸部圧迫感、のど締め付け感、後頚部痛および圧迫感、息苦しさ、などがありいずれも軽微で中止により回復しています。

症例1 30代 女性 ゾーミック服用後胸部圧迫感が2時間30分継続した。
症例2 30代 女性 イミグラン1錠服用後20~30分で片側の頬が冷たくなり、後頭部から後締め付け感が発現。2~3時間症状持続後消失。ゾーミックRMへ変更した。

 トリプタン製剤に特有な副作用として「胸部症候群」が知られています。「トリプタン感覚」とも呼ばれ、頚・胸・のど・肩の締め付け感や、重感、圧迫感、痛み、息苦しさといった不快感で、服用後20~30分で出現することが多く10分から2~3時間持続して消失します。狭心症や心筋梗塞の症状との関連で気になる副作用ですが、心筋虚血との関連は薄く、食道平滑筋の運動亢進や肺動脈に対する影響、骨格筋のエネルギー代謝の異常、痛感受性の増加などが原因と考えられています。当モニター報告でも胸部だけでなく後頭部や後頚部の締め付け感や圧迫感の訴えも報告されています。胸部症状が予期せず出現した場合は恐怖感を抱くと思われますので事前に十分な説明が必要です。
 なお胸部症状は冠動脈の虚血ではないと言われてはいますが、トリプタン系薬剤は血管作動薬であり、拡張した脳血管に作用しますから、冠動脈にも少なからずとも作用をもちますのでハイリスクの患者には注意が必要です。米国頭痛学会(AHS)では心臓疾患のある人はトリプタン系薬剤を服用すべきでないと勧告しています。

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■画像提供 広島民医連 (株)ピーエムシー企画
 http://www.pmc-kikaku.jp/about/index.html

 薬学生の部屋

**新連載ご案内【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や350の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行ってきました。
 今般、【薬の副作用から見える医療課題】として疾患ごと主な副作用・副反応の症状ごとに過去のトピックスを整理・精査し直してまとめ連載していきます。

(下記、全日本民医連ホームページで過去掲載履歴ご覧になれます)
https://www.min-iren.gr.jp/?cat=28

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について

<【薬の副作用から見える医療課題】続報〔予告〕>
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用

以下、60まで連載予定です。

 ★医薬品副作用被害救済制度活用の手引きもご一読下さい↓
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/data/110225_01.pdf

◎民医連副作用モニター情報一覧
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k02_fukusayou/

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話し〕一覧
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k01_kusuri/index.html

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