くすりの話

2017年2月28日

くすりの話 青汁

回答・藤竿伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)

 青汁は、もともと緑黄色野菜をジュースにして飲む健康法をもとに九州地方で商品化され、通信販売で全国に広まりました。野菜不足を心配する方に人気で、手軽な健康飲料として売れています。  
 業界紙によると、2015年の「青汁」製品売上額は1010億円と、10年間で1.6倍に増えました。味噌やマヨネーズと同規模、健康食品としては最も大きな市場となっています。
 今では、大手の食品企業も参入し、味が良く飲みやすい製品が量販店でも手軽に買えるようになりました。

● 野菜不足の若者向けに

 商品化され始めた頃、青汁はキャベツの仲間であるケールを原料としてつくられており、青臭さと苦みを強く感じる味でした。現在は大麦若葉・明日葉・ブロッコリー・抹茶なども原料とし、以前より飲みやすい味になっています。
 当初は老化が気になる“中年層”に向けて売り込んでいましたが、最近では野菜不足や美容が気になる“若年層”へと対象年齢を広げ、フルーツ味や蜂蜜入りなど若い女性向けの製品も出回っています。

● 栄養成分は

 2015年「国民健康・栄養調査」によると、20代女性の野菜摂取量は1日平均227gで目標値の65%です。不足分を青汁で補うことができるのでしょうか。
 青汁の広告には、"大麦若葉・ケール・明日葉を材料として栄養価が優れている""葉酸=キャベツ2枚分、食物繊維=バナナ4.5本分、β-カロテン=ピーマン1.5個分が1袋で摂れる"などという記述が多く見られます。
 そこで、有名な12製品の1日摂取量を比較してみました。すると、食物繊維の中央値は1.5gで、20代女性の摂取量の1割程度。とても野菜不足の補充は期待できません。β-カロテンは1日必要量を満たしている製品もありますが、ものによって10倍もの差がありました。
 このように、食材の栄養量が豊富であっても、製品になると差が見られます。絞りかすに残ったり、乾燥工程で熱に弱いビタミンCが減ることが起こるためです。また、栄養素がそのまま体に吸収されるかは、データや文献が示されず、実証されていません。

● 健康効果は信じてよい?

 機能性評価食品制度が始まって1年9カ月。「科学的根拠がある」と届け出ると効能を表示できるため、現在、特定保健用食品の数を上回る668製品(1月31日現在)の表示届が受け付けられています。その中で、青汁製品は18製品だけ。売上上位企業の製品は取得していません。
 研究結果ではなく、利用者の体験談をもとに販売している青汁製品。広告費の一部を研究費に振り替え、野菜不足を補う効能を実証することが、企業の社会的責任ではないでしょうか。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

 

いつでも元気 2017.3 No.305

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