健康・病気・薬

2017年8月22日

副作用モニター情報〈484〉 骨粗しょう治療剤リクラストの使用にふたたび警鐘!

 7月3日付の当欄で、「リクラスト(一般名:ゾレドロン酸水和物)は、他のビスホスフォネート(BP)に比べ急性反応の発現率が非常に高く、見守りなしでの使用は危険」と注意喚起しました。その後、重篤な腎障害が報告されました。
症例)骨折で入退院を繰り返す70代女性。週1回内服していたアレンドロン酸ナトリウム35mgを注射剤へ変更。リクラスト注を15分かけて点滴静注。投与6日後、発熱などの急性反応がないことを確認。投与10日後、血清クレアチニンが上昇し3.42mg/dlに。投与12日後に訪問、元気で尿も出ていたが腎不全の可能性あり入院。容態悪化し、腎不全は改善していない。
 2011年に米国食品医薬品局(FDA)が出した本剤の安全性情報には、腎不全の死者が3年で16人、透析導入も9人と報告されたことから、「クレアチニンクリアランス35ml/分以下は使用すべきでない」とされました。これを受け添付文書も改訂されました(https://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm270199.htm)。
 日本の適正使用手引は「BP製剤は尿細管への毒性を有し、毒性の強さは持続時間よりも最高血中濃度に依存」としています。
 有効成分のゾレドロン酸の強さはミノドロン酸(商品名:ボノテオ)に匹敵します。ミノドロン酸の消化管吸収率をみると1日常用量1mg中0.012mgが体内に吸収されます。これを参考にすると本剤を5mg静注した場合、1日推定必要量の約400倍が血中に入ります。当然、他のBP製剤より腎毒性が現れやすいことが考えられます。
 今回の症例は、利尿剤、ACE阻害剤、NSAIDsを併用しており、腎への「3段攻撃」状態でした(副作用モニター396号、2013年6月17日付参照)。
 本剤の安易な投与は危険です。年1回の利便性だけでなく、リスクをしっかり把握しましょう。投与前の腎機能評価と投与後少なくとも1カ月は腎機能のモニター等が必要ですが、このような管理が出来る患者は限られています。

(民医連新聞 第1650号 2017年8月21日)

副作用モニター情報履歴一覧

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ