副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2017年9月19日

副作用モニター情報〈486〉 脂質異常症薬スタチン製剤による糖尿病リスクの増加

 脂質異常症薬ロスバスタチンによる、HbAlc上昇が報告されました。べザフィブラートSRからロスバスタチン(商品名:クレストール5mg)に変更して35日後、HbAlc値が6.8から7.7へと上昇したという症例です。過去3年間の副作用報告には、他にアトルバスタチン(リピトール)による血糖値上昇が2例報告されていました。
 スタチン製剤による血糖値上昇や糖尿病発症リスク増加の関連は、大規模臨床試験やメタ解析などから示唆されています。同剤がインスリン感受性とインスリン分泌を低下させることが原因と考えられていますが、製剤の種類や投与量によって差があるようです。日本人の保険データを用いたコホート研究(2017年7月、BMJオンライン版)もあります。
 米国やEUでは添付文書に記載されていますが、日本の添付文書では、アトルバスタチンにのみ「重大な副作用」として高血糖・糖尿病が記載され、「糖尿病患者に慎重投与」となっています。血糖値上昇の副作用の記載があるのはアトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチンの3剤で、フルバスタチンはその他の注意に「リスク上昇」の記載がありますが、プラバスタチンとピタバスタチンには記載はありません。また、PMDAの2012~16年度の報告数では糖尿病リスク関連の副作用は、アトルバスタチンが22例と最多、他はロスバスタチンとピタバスタチンが各2例でした。
 日米のガイドライン上で糖尿病患者への本製剤の投与は「糖尿病発症リスクの上昇は、同剤による心血管イベントリスク抑制の効果を上回るほどではない」とされています。投与を推奨しているわけですが、血糖値の上昇に注意が必要です。上昇がみられた場合は、比較的低リスクと考えられるプラバスタチンやピタバスタチンなどの製剤への変更なども考えるべきです。

(民医連新聞 第1652号 2017年9月18日)

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