事業所のある風景

2017年9月15日

民医連事業所のある風景 茨城/あおぞら診療所 人権のアンテナの感度をあげ、寄り添った医療・介護の展開を

地域住民の声で15年前に誕生

 あおぞら診療所のある茨城県取手市は、高度経済成長期に東京のベッドタウンとして拡大した千葉県に隣接した街で、高齢化が深刻化しています。20年以上前から民医連・生協の医療機関がほしいとの住民運動がはじまり、水戸に病院と診療所を持つ茨城保健生協の支部が1995年に誕生し、茨城保健生協の第2番目の診療所として、2002年7月に既存の建物を改修して当診療所が開設しました。
 開設前の所長予定医師の退職、その後赴任した医師も2年で退職、その後は非常勤医中心で休診日も多くなるなど、医師体制での混乱が数年続きました。2007年に石井啓一所長が赴任し、慢性疾患管理・在宅医療・保健予防活動に力を入れた診療を展開してきました。
 首都圏のベッドタウン・急速な高齢化といった地域性、地域組合員の要求、老朽化した賃貸診療所からの移転・新築を進めることもあり、2010年7月に、「医療福祉生協いばらき」を立ち上げ、12月には診療所を新法人に移管、診療所の移転・新築を決定、2012年1月に今の診療所に移りました。

在宅医療・子どもから高齢者まで

 高齢化の進展や医療情勢の変化もあって、在宅医療はますます重要です。当診療所の石井所長が取手医師会の役員となり、ここ数年にわたって開業医とともに在宅医療ネットワークづくりを進めてきました。取手市、守谷市、利根町での開業医・病院連携での在宅支援診療所のネットワークづくり、また県の助成で介護事業者も含めた在宅医療・介護連携推進事業にとりくんで、多職種連携や市民への啓蒙活動を進めてきています。
 診療所には、病院退院後の紹介、在宅ネットワーク事務局からの依頼だけでなく、行政や地域のケアマネジャーなど、さまざまな紹介があり、最近はターミナルケアでの紹介も増えています。基本的には依頼を「断らない」立場を堅持し、併設した居宅ケアマネジャーと共に在宅ケアの条件を整え、「最後まで自分らしく生きる」ことを支える医療を展開しています。
 子どもへの定期接種ワクチンが増えるなか、保護者への指導・援助を強めています。また乳児健診では、育児指導や子どもの健康管理も踏まえた援助を心がけ、このような援助も活きて、小児患者も増えています。子どもから高齢者まで、家族の健康を守る医療をめざしています。

いのちを守る最後の砦

 取手市では毎年孤立死が100人を超えるなど高齢化と経済格差が凝縮して現れています。無料低額診療事業は新法人化後に開始しましたが、国保資格証が昨年約200人に発行され、資格証の方が年に数人、無料低額診療事業制度を利用しています。また昨年からは、仮放免中の外国人も利用するようになりました。昨年10月には、キリスト教会関係のNPO法人との連携で、当診療所で、茨城県で初めての無料健診会を開催しました。茨城県南部や千葉県北部にもたくさんの仮放免中の外国人が、生活に困窮し健康を損ないながら暮らしていることを知りました。
 急速な高齢化、経済格差と貧困の拡大、無権利状態の外国人など、地域には困難を抱えた人びとが埋もれています。人権のアンテナの感度をあげ、地域の人びとに寄り添った医療・介護を展開していけるよう、今後も所長をはじめ職員一丸でとりくんでいきます。
あおぞら診療所 事務長 新田 幸次)

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