副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2017年10月3日

副作用モニター情報〈487〉 骨粗しょう症治療剤プラリアの低カルシウム血症

 プラリア(一般名:デノスマブ)は骨粗しょう症治療剤で、RANKL(破骨細胞の形成・機能・生存に重要な役割を果たすタンパク質)の働きを阻害して破骨細胞の活性化を抑制し骨吸収を抑えます。
 同成分製剤のランマーク(デノスマブ120mg、適応:多発性骨髄腫による骨病変等)では、低Ca(カルシウム)血症による死亡例があります。当モニターには3年間でデノスマブの副作用が5件報告され、ランマークは2件(低Ca血症)、プラリアは3件(腎不全・うっ血性心不全・深部静脈血栓症、顎骨骨髄炎、低Ca血症)でした。
症例)80代後半、女性。プラリア投与前3カ月のCa値は8.5mg/dl。投与翌日に7.9mg/dl、9日目には6.3mg/dlと低下し、10日目に骨折で入院。11日目5.3mg/dlとさらに低下。Ca剤内服増量、ビタミンD製剤追加し、グルコン酸Caを注射。Ca値をモニタリングしつつ補充量を調節し、8.2mg/dlで安定するまで59日を要した。
 同剤は、「成人には6カ月に1回、60mgを皮下注射」と投与頻度が少ないため、長期間の治療継続が期待されました。しかし、定期的なCa値のモニタリングや腎機能チェックなど、リスク管理を見落とす危険性もあります。
 低Ca血症のリスクは腎機能障害の程度に従って高くなるので、高齢者では特に注意が必要です。発現は投与開始から数週間以内が多いものの、それ以降にも起こり得ます。Ca値の定期的なモニタリングと患者への説明が不可欠です。Ca値のモニタリングは、(1)毎投与前、(2)低Ca血症のリスク因子がある患者(重度の腎機能障害、クレアチニン・クリアランス30ml/分未満など)では初回投与後2週間以内、(3)低Ca血症が疑われる症状(筋のけい縮、ピクピクした動き、けいれん、あるいは手指・足指・口囲のしびれ感、ピリピリ感など)が現れた時に推奨されています。
 今年4月には、重大な副作用に「治療中止後の多発性椎体骨折」が追記されましたが、7月には「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」の効能・効果が追加承認され、今後使用量が増える可能性もあります。プラリアはランマークに比べて用量は少ないものの、重篤な低Ca血症が起きないよう安全面を十分にフォローできる患者選定も重要です。

(民医連新聞 第1653号 2017年10月2日)

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