MIN-IRENトピックス

2017年12月5日

沖縄はいま 米軍新基地建設とたたかう名護市から 稲嶺進市長の話 たび重なる違法な工事強行 われわれはあきらめません

 沖縄・名護市辺野古では、国・沖縄防衛局が法的な手続きを無視し、米軍新基地建設の工事を強行しています。名護市の稲嶺進市長は就任以来、「新基地建設反対」を掲げて奮闘。稲嶺市長は、来年二月の名護市長選で三期目に挑戦することを表明しています(二月四日投票)。民医連も「沖縄の問題は全国の問題」として支援連帯行動にとりくんでおり、一一月一三日、全日本の岸本啓介事務局長、沖縄民医連の名嘉共道事務局長が表敬訪問しました。沖縄の平和と民主主義を守るために、私たちにできることは―。新基地建設工事の現状と問題点、市政への思いなどを聞きました。

 八年前、私が市長選挙に立候補することが決まった時、辺野古の浜に行き、おじぃ、おばぁが新基地建設に反対して三六五日がんばっている姿を目の当たりにしました。
 そこで聞いたのは「戦時中、何も食べるものがない時に、この豊かな海の恵みが腹を満たしてくれた。これまで生きてこられたのはこの海のおかげ。その海に、命を奪う基地を作らせるわけにはいかない。子や孫、次の世代に、基地を絶対に残したくない」という強い思いでした。その時、「この活動はイデオロギーの問題ではない。生活そのものの問題だ」と感じたのです。
 沖縄は戦後ずっと、基地の負担や米兵による事件・事故の負担を背負ってきました。これから一〇〇年同じことを繰り返すのは耐えられない。「おじぃ、おばぁの行動は、人として、親としてあるべき姿だ」と感じた時から、私の活動が始まりました。

「最強の要塞」をつくる

 米軍新基地工事が始まったことだけが報道されています。しかし、工事は法的手続きを無視した強行で、法治国家としてあるまじき行為。絶対に許されません。
 政府はこれまで「辺野古新基地は、米軍普天間基地の代替施設として必要だ」と言い続けてきました。しかし、辺野古の新基地には、普天間基地にはなかった強襲揚陸艦(戦車や大型ヘリを上陸させることができ、高い襲撃能力を持つ軍艦)の軍港機能を持たせたり、滑走路を二本作るなど、新しい機能を付加した「最強の要塞」にしようとしています。普天間基地の代替などではなく、全く新しい基地を作る計画なのです。
 政府は中国や北朝鮮を名指しし、「抑止力」「地理的優位性」を新基地建設の根拠にしています。一方で、「辺野古でなくてもいい」と発言した元防衛大臣もいる。根拠は破綻しているのです。
 昨年四月に始まったK9護岸工事は、一〇〇メートルすすんだところでストップしたままです。沖縄防衛局が前知事に提出した埋め立て承認願書に、「工事中はサンゴなどを守る環境保全策を講ずる」とあるためです。これ以上、工事を先にすすめれば、海底のサンゴを傷つけることになります。それこそ違法な状態での工事になるわけです。ですから、今はまだ基地建設を止めることができる状況なのです。
 キャンプ・シュワブゲート前や海上で、多くの人たちが身を挺して抗議行動をしています。県外からもたくさんの支援をもらい、地元は勇気づけられています。
 国や沖縄防衛局は「止めようとしても無理ですよ。あきらめてください」と言いたいのでしょうが、私たちはあきらめません。怪物のような権力に対して、われわれは非暴力で抗議を継続します。そして、「まだ止める手立てを持っている」ということを、日本社会や国際社会に訴えていきたいと思っています。

攻撃もあるが暮らしは改善

 市長に就任する前、「稲嶺が市長になったら土建業が倒産する」「米軍再編交付金を受け取らないと市の予算は組めない」などと攻撃されました。しかし実際には、市長就任後の七年間で計約五〇〇億円の歳入を増やしてきました。
 安全で安心して住める市にするためには、子どもが生活できる環境づくりが大事です。私は前市長が交付金をもらっても実現しなかった子育て支援にとりくみ、保育園の待機児童解消にもとりくみました。中学卒業までの医療費無料を実現しているのは、県内一一の市の中でも名護市だけです。

***

 しかし、オスプレイが飛び交う空の下では、とても安心して暮らせません。沖縄をささえている観光業も、新基地ができると大打撃を受けるでしょう。二〇〇一年にアメリカで同時多発テロが起こった時、米軍基地のある沖縄への修学旅行はいっせいにキャンセルされました。米軍基地があるということは、そういう影響を与えることなのです。基地は、沖縄の経済にとって最大の阻害要因です。
 こうした沖縄の真実は、本土の国民に十分に届いていない状況です。現場に来ていただけると、辺野古でなぜこんなことが起きているのかが見えてくると思いますし、私たちも大変勇気づけられ、さらにがんばる力になります。
(『いつでも元気』宮武真希記者)


〈いなみね・すすむ〉1945年、名護市生まれ。71年、琉球大学法学部を卒業し、名護市役所に入職。総務部長、収入役、名護市教育委員会教育長を経て、2010年の名護市長選に新基地建設反対の立場で立候補し、当選。14年、再選。


データでみる 稲嶺市政2期8年

いのちと暮らし守る市政が着実に前進

 インタビューにもありますが、米軍の新基地建設に反対する稲嶺市政には「米軍再編交付金を受け取らないと市の予算は組めない」などの攻撃もされてきました。「米軍再編交付金」とは、米軍基地の新設(再編)を受け入れない自治体には交付されません。実際に、基地建設を受け入れていた前の市政で交付されていた17億4200億円は、稲嶺市政が誕生したとたん打ち切りに。ところが、そうした状況下でも、名護市は住民の教育や社会保障に予算をとり、財政基盤も安定させてきました。(「やんばる統一連」の資料をもとに作成)


これは日本全体の問題

―民医連が支援・連帯

 民医連は二〇〇四年一〇月に、「辺野古の海に一本の杭も打たせない」と支援・連帯行動を開始しました。この行動は一〇月に第四一次を数え、これまで全国から多くの職員が参加しています。
 座り込みをする人たちの救護班に、沖縄民医連や全国各地から看護師を送り出しています。七月以降、全国の民医連からの救護班は二三回、参加した看護師は四八人になりました(一一月末現在)。
 このとりくみを通じて、「平和を守る民医連の役割を再確認した」「同じ日本で起きている事態を目の当たりにしてショックを受けた。これは沖縄だけの問題ではない。自分たちの問題だ」など、心を寄せる職員が増えています。

(民医連新聞 第1657号 2017年12月4日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ