声明・見解

2017年11月30日

【声明2017.11.30】「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」広島地裁の判決を受けて歴史を巻き戻す不当な判決は断じて許されない

2017年11月30日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末  衛
被ばく問題委員長 藤原 秀文

 11月28日、広島地裁は、「原爆症の認定の取り消しが不当である」ことを求めた12人の原告全員の訴えを全て「却下」するという判決を言い渡した。この判決は、これまでの「原爆症認定」を求めて積み重ねてきた「集団訴訟」の流れに逆行するもので、「歴史を巻き戻す」判断であり、断じて許されない。
 第一の問題点は、裁判の争点にもなかった、放射線起因性の判定基準に「DS02」を突然持ち込んで、甲状腺機能低下症は、初期放射線で4グレイ(ほぼ4,000mSv)、心筋梗塞では0.5グレイ(ほぼ500mSv)以上の被曝線量を受けているかで判断していることである。国は、これまでの「集団訴訟」の判決を受けて「審査の基準」を三度にわたって改めてきた。それは、初期放射線のみで判断するのではなく、被爆者のそれぞれの被爆実態を考慮することとの司法の厳しい判断を受けてのことである。今回の判決は、2013年の「新しい審査の基準」そのものをも否定するものであり、まさに「歴史を巻き戻す」不当な判決と言わざるを得なく、断じて許されない。
 第二の問題点は、放射線による「急性症状」を医学的な視点を全く無視し、独自の判断基準で、「急性症状はあったとは認め難く」としている。その基準は、国側(被告)が提示した「急性放射線症候群」によっている。これは被ばく事故を前提にしたものであり、被爆者の「急性症状」とは全く相いれないものである。原爆被爆者の被爆実態をまったく無視したものである。
 さらに、第三の問題点は、「甲状腺機能低下症を発症しているとは認め難い」として、現に治療中の被爆者の甲状腺機能低下症そのものを否定していることである。
 これらの中から見えることは、被爆者の思いを全く無視していることである。被爆者の被爆実態や被爆後の苦しみに寄り添う視点はなく、「被爆者援護法」の精神すら否定するものあり、「歴史を巻き戻す」不当な判決であり、強く抗議する。
 全日本民医連は、高齢化しつつある被爆者の思いに寄り添いつつ、この断じて許されない不当な判決に対し、全国の科学者・医学者の協力をも得ながら、全日本民医連の総力を挙げて、対決していく決意である。そして被爆者への医療や介護の充実、また生活支援をさらに強化していくために奮闘する。

以上

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