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2018年8月21日

これでばっちり ニュースな言葉 18歳成人でどう変わる?

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる法案が成立し、2022年4月1日から施行されます。問題点について、シンフォニア法律事務所の弁護士、中野和子さんが解説します。

シンフォニア法律事務所 弁護士

こたえる人 中野 和子さん

 今年の通常国会で、民法の成人年齢を二〇歳から一八歳に引き下げる法案が成立しました。二〇二二年四月一日から施行されます(表参照)。
 現在の民法第四条は、「年齢二十歳をもって、成年とする。」と定めています。民法の「成年」のもつ法的意味と一般の言葉での「成人」のもつ意味は違います。一般に「成人」は祝う事柄であり、大人として立派に育ったことを意味します。
 ですから、成人を一八歳に引き下げることは早く大人になってほしいという親の願いを反映すると歓迎する意見もあるでしょう。

一律一八歳の理由なし

 自公政権は、この国民一般の「思い」を利用して、民法の「成年」でない「未成年」の法的効果を国民に説明することなく、成人年齢を引き下げる法案を提出し、成立させました。
 もともと、憲法改正国民投票法の審議の際に、一八歳の投票権を認めたことが引き金となり、少年法も含めて全て一八歳に一致させなければならないと自民党は主張していました。
 しかし、成人年齢を一八歳に一致させる理由はなく、法律の目的に従い年齢を設定すればよいので、酒・たばこは現行のままです。
 少年法は引き下げの危険があります。多くの国では兵役年齢と成人年齢を一致させ、一八歳成人が多いですが、日本では兵役はないので、成人年齢を一八歳にする理由はありません。

自立困難な若者増える

 では、そもそも、民法の「成年」にはどのような法的効果があるでしょうか。
 一番大きいのが、「成年」でないこと、すなわち「未成年」の効果です。
 民法は、私的自治の法律で、契約自由の原則があり、法的効果を理解できない、すなわち意思能力のない者の意思表示は無効です。おおむね一〇歳位までの幼児を含む子どもは、意思無能力者とされます。
 小学校高学年位から二〇歳未満までは、意思能力はあるけれども未熟であり保護する必要があるので、一律に行為無能力者として法定代理人の同意がなければ契約を取り消しうるものとしました(民法第五条二項)。このような行為無能力制度は、精神上の障害のある成年被後見人、被保佐人にも定められています。
 未成年者の法定代理人は親権者で、共同親権の原則から、父と母と双方の同意がなければ取り消すことができ、契約を取り消した場合は初めから無効となり、すでに受け取ったものは現に利益を受けている限度で返還すればよいのです。
 従って、現在、親に無断で高額な美容整形の契約をしても、親が取り消すことができます。大学でマルチ商法などに誘われて契約しても、未成年者であるという事実だけで取り消すことができます。モデルの仕事と誘われてAV出演契約をしてしまった場合も、未成年者であるというだけで救出することができます。

親権者の同意不要が拡大

 このように未成年者の保護を一八歳、一九歳から奪うことは、どの親も望んでいなかったでしょう。親権者の同意は契約以外でも学校や病院で不要となります。扶養の点でも養育費が一八歳までとなる恐れがあり、自立困難な若者が増え、高校生でも未成年者と成年が混在することで生徒指導が難しくなり、社会的経験のなさから不当な契約を締結しても、一八歳、一九歳を守ることができません。
 この点、二〇〇九年一〇月の法制審議会では、若年者の自立を促す施策、消費者被害拡大のおそれを解決する施策の実現が必要で、その効果が十分に発揮されること、国民の意識にも表れることを一八歳引き下げの条件としていました。
 もちろん一八歳で不当な契約をした場合も、各地の消費生活相談センターで解決できる場合もあるので、施行までに、小中学校から消費者教育を十分に行うことが何より求められます。消費者契約法改正で恋人商法などの取消事由が若干追加されましたが、それでは足りず、消費者委員会は、「若年成年」を守る制度の導入も提唱しています。

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(民医連新聞 第1674号 2018年8月20日)

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