副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2018年8月21日

副作用モニター情報〈501〉 献血グロブリンによる伝染性紅斑

 血液(献血など)から作る薬剤を血漿(しょう)分画製剤と言います。血漿分画製剤は、アルブミンやグロブリンなど、いわゆる血液製剤と言われるものであり、医療には欠かせない医薬品です。この血漿分画製剤の添付文書に、「現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難である」との記載があります。今回、献血グロブリン製剤による伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染)が報告されたので紹介します。

症例)1~6歳 男児 数日前から発熱あり、「川崎病」疑いで当院に紹介受診。川崎病症状が5項目出現しているため、確定診断となり入院となる。
入院1日目:アスピリン、献血グロブリン投与開始。
入院2日目:症状軽快し、解熱傾向。
入院3日目:心エコーで冠動脈病変なく、経過良好。
入院6日目:アスピリン減量、退院方向
入院10日目:上肢中心に大腿にハッキリした紅斑が出現。37.8度の発熱。
入院11日目:四肢にまだらな紅斑。頬の紅斑なし、掻痒感なし。発熱なし。
入院12日目:血液検査で症状の悪化はないため、退院となり外来フォローとなる。
退院7日目:紅斑は消失していた。
 入院10日目に発現した紅斑について、医師は「献血グロブリンによる伝染性紅斑」と判断。伝染性紅斑は、俗に「りんご病」とも言われ、ヒトパルボウイルスB19によって起こることがわかっています。今回の患者は、献血グロブリン投与から約10日後に紅斑が発現しており、伝染性紅斑の一般的な潜伏期間と言われる期間とも一致し、他の患者との特別な接触もなかったため、副作用と判断しました。
 日本では、厚生省が承認した非加熱血液製剤にHIVが混入していたことにより、主に1982~85年にかけて、治療に使った血友病患者の4割、約2000人もがHIVに感染した「薬害エイズ事件」がありました。その後、クロイツフェルト・ヤコブ病などを経験。2003年から、血漿分画製剤(特定生物由来製品)のロット番号を20年保存することが義務づけられています。
 血漿分画製剤は厳重に管理されていますが、未知のウイルスを含め、今回の副作用のように、加熱などの処理に耐えるウイルスによる感染の可能性は残っています。

(民医連新聞 第1674号 2018年8月20日)

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