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2018年10月16日

これでばっちり ニュースな言葉 サマータイム制は有効か?

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、突如出てきた「サマータイム(夏時間)」。政府は、2020年の導入は断念しましたが、その問題点について石川・城北病院の医師、松浦健伸さんが解説します。

石川・城北病院 医師
こたえる人 松浦 健伸さん

 「サマータイム(夏時間)」はすべての国民に関連するテーマです。健康問題に直結することであり、私たち医療・介護の従事者も知っておくべき事柄だと思います。日本睡眠学会が『サマータイム~健康に与える影響』を発表しています(二〇一一年)。本論もこれを参考にしています。

■2時間早起き強制

 そもそもの意味ですが、欧米では「デイライト・セービング・タイム(DayLight Saving Time)」と呼ばれ、サマータイムは日本での通称です。英語標記のように昼間の時間を無駄にしない制度の意味です。夏は昼間が長いのでそれを有効利用しようという考えです。具体的には、春になったらある時点で時計の針自体を早め、秋になったらまた戻すという日本の標準時間そのものを一時的に変更しようというものです。
 例えば二時間早めようとなると、現在の午前五時が午前七時となります。出勤時間が八時だとすると、サマータイム制になれば今の六時には出勤しないといけないことになります。普通に考えても、二時間早く起きるなんて大変ですね。
 健康への影響はどうなのか、体がついていけるのかと懸念されます。サマータイム制の実施には長い歴史もあって健康への影響もたくさん研究されています。

■体内と体外時計のずれ

 バクテリアからヒトにいたるまで、地球上の生命現象には二四時間を周期とするリズムがあります。これをサーカディアンリズム(概日リズム)といいます。そしてヒトを含めた哺乳類の概日リズムは、脳内の体内時計(ヒトは平均約二四・五時間周期)が地球の二四時間の昼夜の周期に同調することで実現しています。この体内時計が、睡眠・覚醒、体温、摂食、飲水などさまざまな生体のリズムの司令塔となっています。ヒトは、このリズムを環境上の時計(体外時計)に同調させて社会生活を営んでいますが、体内時計と体外時計がずれて(脱同調)、睡眠・覚醒含むリズムの乱れが起き、健康障害が発生します。

■生活や健康障害に

 例えば一時間早めるサマータイム制による睡眠・覚醒への影響には、このリズムへの影響のほか、眠りの質への影響、眠りの量への影響が指摘されています。その結果、夏時間に変更後(ある時点で時計を早めた後)眠気、ぼんやり、集中困難が続きます。睡眠効率が低下し、寝つきの悪さや途中覚醒の増加が起きます。夏時間への移行期には睡眠時間が一時間減ることが報告されています。
 実際の健康や生活障害として、変更の最初の一週間で心筋梗塞発症リスクが五%増加(スウェーデン)、交通事故の増加などが報告され(資料)、生活習慣病の増加も懸念されています。私たちの生体リズムは、長い生物の進化を土台に自然に適したものとなっているのであり、時計の針に合わせているのではありません。一時間のずれさえ健康障害につながることが明らかになっています。ましてこのほど提案された二時間前倒しなど論外です。

■欧州連合は廃止決定

 サマータイム制を導入してきた欧州連合(EU)は、広範な加盟国国民の意見集約によって、健康被害を大きな理由として制度を見直し、廃止することにしました。制度のねらいであった省エネ効果も疑問視されています。日本では長時間労働の増加、ただでさえ短い睡眠時間のさらなる短縮の懸念などもあります。当然健康障害につながります。喜ぶのはシステム変更の特需に潤う業界だけです。とはいえ彼らも二〇二〇年導入は期間が短すぎて制度変更は困難と言っていました。
 マラソン選手などアスリートのためなら別の方法もあるでしょう。国民全体を巻き込んで、健康や生活を犠牲にすることはやめてもらいたい。IOCは賛成したようです。拝金主義なのでしょうか。健康を考えているとは思えません。

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(民医連新聞 第1678号 2018年10月15日)

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