健康・病気・薬

2018年11月6日

副作用モニター情報〈506〉 アリピプラゾールとアカシジア(静座不能)

 アリピプラゾールは、非定型の抗精神病薬で、2006年に販売が開始されました。その後、12年に双極性障害における躁(そう)症状の改善、13年にうつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)、 16年に小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性と効能が拡大し、処方患者も増えています。
 当初は、ドパミンD2受容体の部分作動薬というふれこみで、錐体外路症状をはじめとする副作用が出にくい、とされていました。しかしながら、アカシジア(静座不能)は、11.9%で報告され、リスペリドンの倍の割合となっています(承認時の国内臨床試験)。民医連の副作用モニターに報告されたアリピプラゾールの副作用35件中10件がアカシジアでした。
 アカシジアとは、静座不能症とも呼ばれ、強い不安焦燥感や内的不隠を伴う「じっとしていられない、じっと座っていられない」状態を示します。17年にエビリファイ持続性水懸筋注用製剤が発売され、当モニターにも注射によるアカシジアの報告が寄せられました。
症例)40代、女性。統合失調症
投与開始21日前 エビリファイ12mg分1で開始、24mg/日まで漸増。
投与開始日 エビリファイ筋注400mgを上腕投与で開始。内服のエビリファイは、12mg/日へ半減し14日間服用。
投与12日目 退院。
投与28日目 エビリファイ筋注400mgを上腕投与で2回目投与。
投与56日目・中止日 診察中に立ち上がって歩いたり、座ったりを繰り返している。エビリファイ筋注400mg中止。内服でクエチアピン75mg分3開始。
中止16日後 診察中に突然立ち上がるが、ソワソワは少し落ち着いてきた。

* * *

 この症例では、内服から注射に剤型変更し、症状が発現しました。アリピプラゾールは非常に半減期が長く(内服で61時間)、体内に蓄積し、注射剤と重なり血中濃度が上昇した可能性があります。中止後の症状の改善に時間がかかるのも、半減期の長さと関連していると考えられます。アリピプラゾールが他の非定型抗精神病薬に比べてアカシジアの発現率が高いのは、ドパミン受容体への結合力の強さが関連していると考えられます。服用中や他剤からの変更時にはアカシジアの発現に注意しましょう。

(民医連新聞 第1679号 2018年11月5日)

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