医療・看護

2019年3月6日

【声明2019.03.06】冤罪は許されない-乳腺外科医師事件における東京地方検察庁の控訴に強く抗議する

2019年3月6日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛

 2016年、東京民医連の柳原病院で、非常勤の乳腺外科医師が女性患者に対するわいせつ行為をしたとして準強制わいせつに問われた事件に対し、2019年2月20日、東京地裁は完全な無罪判決を言い渡しました。しかし、3月5日、この事実と道理にかなった判決に対して、東京地方検察庁は不当にも控訴しました。怒りをこめて抗議するものです。

 一審判決では、女性患者の訴えは術後のせん妄による可能性があること、その証言を信頼するには証明力の強い補強証拠が必要であると指摘しています。そして検察が補強証拠として提出した科学捜査研究所研究員によるDNA定量検査の結果について、検査結果を書き留めるワークシートが鉛筆書きで、明らかなだけでも9カ所も書き換えた跡があること、さらに本来は再現実験を可能にするために残しておくべき抽出液を破棄したことなどから、「検査者としての誠実性に疑念がある」と厳しく非難し、その信用性には疑義があり、その証明力は十分なものとは言えないと断じました。

 この事件では、当時の病室の状況や看護師の出入りなどからみて、そもそも外科医師によるわいせつ行為などはありえません。
 一審判決は、女性患者が手術後の麻酔から覚醒する際のせん妄状態に陥っていた可能性は十分にあり、せん妄に伴って性的幻覚を体験していた可能性も相応にあると認めています。この判断は、医師や医療団体には当然の判断として受け止められ、広く世論も支持しています。
 本件は、女性患者が性的幻覚をみたことが、警察・検察によって「事件」にされてしまった冤罪です。

 被告医師は、無実の罪で不当に逮捕・起訴され、職や社会的名誉を失い、105日にわたる長期間の拘留を強いられました。今後、さらに裁判が続けば、多大な精神的苦痛をあたえることになります。これは二重、三重の人権侵害であり、到底許すことはできません。
 また、このような冤罪が許されれば、日本中の医師は安心して手術や診療にあたることができなくなります。

 私たちは、東京地方検察庁の控訴に対し抗議するとともに、無罪判決の確定をめざして引き続き裁判支援に力を尽くします。

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