くすりの話

2019年4月30日

くすりの話 
ピロリ菌の除菌

執筆/澤谷 真希(北海道保健企画・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に、薬剤師がお答えします。
 今回はピロリ菌の除菌についてです。

 日本人の半数近くがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染しているとも言われます。研究が進むにつれて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を患う方のほとんどがピロリ菌に感染していること、さらにピロリ菌を除菌すると再発を抑えられることが分かってきました。「胃がん患者の98%がピロリ菌に感染していた」という調査報告を聞いて、驚いたことがある方もいるかもしれません。
 ピロリ菌は胃の中でアルカリ性のアンモニアを産生して、胃酸を中和することで生き続けます。その際に出る活性酸素や毒素が胃の粘膜を傷つけ、炎症や潰瘍を起こすと考えられています。

6種類の検査

 ピロリ菌の感染を調べる検査法は6種類あります。このうち内視鏡を使う方法は3種類あり、胃の中の様子を観察しつつ胃壁から組織を採取します。「迅速ウレアーゼ試験」は試薬にピロリ菌が出す酵素が反応するか調べる検査です。「鏡検法」は検体を顕微鏡でのぞいて確認する方法で、「培養法」は検体中の細菌を培養してピロリ菌の有無を調べます。
 内視鏡を使わない方法も3種類あり、よく使われるのは「尿素呼気試験」です。検査用の薬を飲んで息を吐き出し、呼気にピロリ菌が尿素から作った二酸化炭素が含まれているかを調べます。この場合、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸を抑える薬を飲んでいると偽陰性になる確率が高くなるので、検査前に2週間以上の休薬が必要です。その他、血液と尿を採取して調べる「抗体検査」、ごく少量の便を採って試薬に反応させる「便中抗原検査」があります。

除菌の方法

 ピロリ菌の除菌には1種類の胃酸を抑える薬と、2種類の抗菌薬を併用します。胃酸の分泌を抑えることで、抗菌薬の効果を高めます。1日2回、7日間続けて服用します。
 飲み忘れや自己判断での調節・中断は、除菌失敗のもとです。薬の副作用によって下痢や味覚異常などが起こる場合がありますが、軽度ならば服用を継続しましょう。発疹や重症の下痢、血便や発熱などの問題が起こった場合は、再度受診して医師の指示を仰いでください。
 飲み終わってから4週間以上経った後、除菌の成否を判定するための検査を受けます。残念ながら再び陽性となってしまった場合、前回の抗菌薬1種類を別のものに変えて、同じように7日間続けて服用します。ここで使う「メトロニダゾール」という抗菌薬はアルコールとの飲み合わせが悪いため、服用中とその前後は禁酒する必要があります。
 ピロリ菌の除菌については、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などのほか「内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされた患者」にも保険が適用されます。気になる方はかかりつけやお近くの医療機関にご相談ください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2019.5 No.331

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ