事業所のある風景

2019年10月15日

民医連事業所のある風景 福島・郡山医療生協 全国規模の経営対策支援を受け いま、経営再建のスタートラインに

『貧しき人々の群』 にあやかって命名

 郡山医療生協は1972年5月14日の創立総会を起点に、民主診療所開設をめざし誕生しました。その後、1974年4月に宮本百合子の『貧しき人々の群』のK村のモデルとなった桑野村にあやかり命名された「桑野診療所」で眼科診療が開始されました。当時、経済の高度成長政策のなか、人間の安全が軽視され自然破壊、環境汚染が深刻になり、健康破壊の社会的要因が増大する情勢でした。そうしたなかで福島・浜通り医療生協に学び、郡山にも民主診療所をつくろうと心ある有志が立ち上がり、種をまく人々の組織と運動が始まりました。

創立50周年を目前に

 郡山医療生協は2022年で創立50周年を迎えます。組織現況(2019年3月末現在)は組合員数2万9070人。職員数327人。事業所は病院120床(一般21、包括ケア62、療養37)、介護保険事業16事業所、付帯事業2事業で構成されており地域の医療と介護・福祉を支える役割を担っています。桑野協立病院(写真上)は3度の増改築計画を経て高齢化や地域医療構想の進展とともに、より地域の在宅医療を支援するために入院や外来機能を見直しながら無差別・平等の医療・介護をめざし現在に至っています。

経営再建を実現

 事業収益全体の7割以上を占める桑野協立病院は、2015年まで病棟はすべて一般病床で運営されてきました。しかし、高齢化や医療制度の変化、あわせて3・11震災後の環境の変化に経営管理が対応できず、地域の医療ニーズとの乖離は広がり病院経営の前進を阻んできました。2013年末には経営悪化の兆候がはじまり、2017年8月には資金ショートの危機を迎える事態になりました。2017年10月に法人理事会は、地域の大切な財産である郡山医療生協をまもるために全日本民医連に支援要請を行い、全国規模の民医連的経営再建のとりくみが開始されました。
 経営幹部を先頭に経営危機の現状や地域の医療・介護と地域の財産である生協を守り、職員の生活を守る私たちの使命を職員に繰り返し伝え、経営改善に向けた意志統一を行いました。まずは正確な経営認識を持つための管理会計等の理解と整備、予算づくりとその進捗管理、同時に業務改善をすすめるなど法人、事業所の管理体制をつくりながら、銀行交渉での長期借入金の借換など資金ショートの危機を回避するあらゆるとりくみをすすめてきました。その結果、病床再編による増収や費用の見直しなどにより2018年度の経常利益は1億1千万円と前年から2億を超える大幅改善を達成しました。このことは、正確な経営状況を伝え、改善目標を示すなかで全職員の経営に関する認識と参加が生まれたことによります。

住み続けられるまちづくりをめざして

 2018年度の経営結果により、危機的資金状況が改善し資金破綻を回避することができ、経営再建に向けてスタートラインに立つことができました。今後は、役職員の知恵と力で医療構想を含めた中長期経営計画を策定し経営再建への展望を示していきます。そのためにも医師確保は緊急かつ必須の課題です。
 今年10月から、無料低額診療事業を開始します。地域の貧困と健康格差と向き合い制度改善運動につなげ、無差別・平等の医療・介護をめざします。この地で医療・介護事業と健康づくり・助け合い運動を通して安心して住み続けられるまちづくりをすすめていきます。
郡山医療生協 専務 鹿又 達治)

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