介護・福祉

2019年10月22日

相談室日誌 連載473 老親の年金に頼る多世代同居 介護保険3割負担は重い(鳥取)

 Aさんは70代男性。脳梗塞後のリハビリ目的で当院に転入院しました。長男夫婦(清掃業の自営で不在がち)と10代の孫4人(2人は精神疾患があり作業所に通所中、2人は学生)の7人暮らし。転院時は車椅子レベルで、今後の介護サービス利用を見越して介護保険を申請し、要介護4の認定がおりました。Aさんには厚生年金と農業収入・家賃収入がありましたが、長男夫婦の自営業収入だけでは生活が厳しく、入院前からAさんの収入に頼らざるを得ない生活でした。介護保険負担割合は現役並み所得の3割負担。家族からは「歩行に介助が必要になるかもしれないと聞き、日中独居になることが心配。年金のすべてを介護サービスに充てることは難しい」と相談がありました。
 退院前には介助で4点杖歩行レベルまで改善しました。リハビリ担当者からは「トイレまでの歩行の自立を目標に、可能な限り毎日通所リハビリを利用した方がよい」とのアドバイスがありました。しかし、毎日通所するだけの費用捻出が困難なため、予算内で利用できる通所介護の1日利用を週3日、短時間デイと訪問リハをそれぞれ週2日利用することにして、自宅に退院しました。
 幸い、昨年度の農業収入が減収していたため、退院直前に介護保険負担割合が2割となり、サービス利用料は4・7万円に収まりました。ちなみに1割の場合、2・3万円、3割負担ならば7万円もの費用が必要でした。
 Aさんのように、自己負担が3割でも収入の全てをサービス費用に充てることができないケースを、この1年間だけでも複数回担当しました。私自身、3割負担=高額所得であり、金銭面での心配をしなくても大丈夫ではないかと思っていました。しかし、実際はAさんのように、現役世代の収入が少なく、多世代同居で老親の年金収入に頼らざるを得ない実態があるのだと痛感しています。「高額所得だから」と先入観を持たずに、ていねいにアセスメントし、支援していくことが必要だと感じています。

(民医連新聞 第1702号 2019年10月21日)

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