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2020年2月4日

寒さは我慢できない! 集めた声を制度改善へ 冬季高齢者生活調査で切りつめた生活が明らかに 北海道民医連/道北勤医協

 厳しい冬、高齢者が安心して暮らすには何が必要か―。北海道民医連は2008年から毎年、冬季高齢者生活調査を行っています。対象は、北海道民医連の医療・介護サービスを利用する、65歳以上の在宅患者・利用者。日常の医療・介護活動の中で、共通のアンケートでの聞き取りをしています。旭川で、道北勤労者医療協会(以下、道北勤医協)の調査に同行しました。(丸山いぶき記者)

 1月17日午後1時、「暖かいね」と訪問調査に向かうのは、道北勤医協社保組織部の神長まゆみさん(看護師)と髙野哲哉さん(事務)。気温はマイナス2・7度。過去に最低気温マイナス41・1度を記録した、日本一寒い旭川の市民にとっては“暖かい日”です。

■弱い者いじめ、やめて

 「こんにちはー。道北勤医協です」と声をかけ訪ねたのは、風呂なし、トイレ共同のアパート2階でひとり暮らしをするAさん(70代男性)。「夏もおじゃましたけど、今度は冬の生活について聞かせてください」と髙野さん。室内で約40分かけ、話を聞きました。
 生活保護を利用するAさんは、冬季加算が引き下げられ、「弱い者いじめはやめてほしい」と話します。室温は20度。灯油代は月1万2000円以上かかることがわかりました(参考‥取材当時、旭川市の灯油価格は1㍑約93円=配送料込み)。2階で暖まりやすいため、日中はこまめに暖房を消し、夜8時以降は消すにもかかわらず、この金額です。
 2018年度、道内の8割の自治体が低所得者等を対象とした福祉灯油制度を実施しましたが、旭川市にはありません。「あったらうれしい。せめて一斗缶灯油くらいは」とAさん。髙野さんが「福祉除雪制度と合わせ、実現できるよう声を集め、市に求めます」と応じました。

■工夫を重ね寒さしのぐ

 次に訪ねたBさん(80代女性)は一条通病院の無料低額診療事業を利用しています。家賃3万1000円のアパートで独居、年金と夫の遺族年金、月額14万円で生活しています。壁かけの室温計では22度、訪問時には消えていたストーブの表示は13度でした。「暖かい日の日中は6時間ほどストーブを消していられる」とBさん。
 しかし、1階の角部屋で夕方から一気に室温が下がるため、ストーブは夜通し弱火でつけていると言います。「そうしないと、朝、火がつかない。1台しかないこのストーブが壊れたら大変」と話します。部屋の至る所に、寒さをしのぐ工夫が。2重窓の間には梱包緩衝材を挟み、下半分は断熱材で冷気を遮断。床にも断熱材とカーペットを敷くなどしていました。

■食費、介護サービス削る

 昨年度の道北勤医協の調査では室温平均22・6度、主な暖房設備は石油ストーブで、灯油代は平均で月2万1300円。一軒家では灯油代が月4~5万円かかることもあります。「除排雪費用も大きな負担」と話すのは調査をまとめた廣岡良典さん(事務)。一方、生活保護の冬季加算は一人世帯で1万2540円です。
 Bさん宅をふり返り、「厳しい自然と住宅事情から、室温は保たなければならない。訪問してあらためて感じます」と髙野さん。神長さんは「しかも暖かいのは居間だけ。私たちが子どもだった40年前と同じ生活の人が多い」と話します。寒さは我慢できないからと食費を削り、介護サービスをやめてしまう高齢者が多く、その結果、外出が減りADLも低下することが、調査から明らかになっています。
 道北勤医協では今年から、調査を各職場に割り振りました。神長さんは「夏の訪問と合わせ職員がひとり1回は参加できる体制をつくり、集めた声を制度の改善につなげたい」と意気込みます。調査や訪問活動を通した友の会づくり、まちづくりに期待を込め、「超高齢社会にも希望を持てるようにがんばりたい」と廣岡さん。

* * *

 北海道民医連の冬季高齢者生活調査は今年で12回目。昨年度は12法人、77事業所から205例が集まりました。今年も全道で、1月6~31日までとりくみました。北海道民医連は調査結果をまとめ記者会見を行う予定です。

(民医連新聞 第1709号 2020年2月3日)

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