副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2020年2月18日

副作用モニター情報〈533〉 デュロキセチン塩酸塩による排尿困難

 デュロキセチン(製品名:サインバルタカプセル)による排尿困難や尿閉の報告が、過去5年間で4例4件ありました。発現は全て服薬開始1週間以内であり、1日用量は20mgと40mgへの増量時でした。
 高度の腎障害者では血中曝露量AUCは2倍になるとされていますが、60代後半女性eGFR30以下への投与例では数日間の導尿が必要でした。投与中止後は、いずれも早期に回復しています。
 本剤はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、排尿困難はノルアドレナリンによる尿道括約筋収縮や膀胱排尿筋弛緩などの作用機序が考えられます。同効薬であるミルナシプランによる排尿障害は当モニター情報450回(2015年12月7日付)ですでに紹介しています。
 米国添付文書では本剤を「尿道抵抗に影響を与える薬剤」に分類し、排尿躊躇(ちゅうちょ)の症状に注意するよう記載されています。一方で、用量依存性の尿失禁回数減少が認められ、約40カ国で「腹圧性尿失禁」の適応が「糖尿病性神経障害」より早く取得されています。
 国内ではうつ病・うつ状態の適応で2010年の販売開始以降、2016年の変形性関節症承認まで、慢性腰痛など4つの適応症が追加されました。排尿困難の報告もこれに伴って増加しており、4例中2例が鎮痛目的の使用でした。今後も注意が必要です。
 排尿困難の副作用報告の中で、重篤度分類を「腎臓」にされているケースがありますが、腎臓そのものへの障害による「乏尿」ではなく、自律神経系の作用機序による排尿困難と考えられる場合は「その他」でいいと思います。(「副作用報告の精度を高めるために」より)

(民医連新聞 第1710号 2020年2月17日)

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