民医連新聞

2020年3月17日

1日目 運動方針案説明 岸本啓介事務局長 綱領改定10年のあゆみを確信にアウトリーチを日常的とりくみに

 最初に新型コロナウイルス感染症の対策について報告します。2月17日に感染者が出始める「国内発生早期」となったことを受けて、来賓の方々へ状況報告と参加を控えていただく旨を連絡しました。事業所での感染対策などで代議員の変更、来賓予定の方の不参加のお返事をいただいたことを報告しておきます。

 第44回総会は綱領改定10年の節目であり、第1章で10年のふり返りとともに、2020年代の重点課題を提起しました。第2章の情勢の特徴、第3章の43期の総括を踏まえ、2020年代初頭の2年間の方針を提案しています。第4章の冒頭の「次の10年の発展を展望する44期にしましょう」との呼びかけに「今後10年の皮切りになる総会に」「運動方針案はわかりやすくていねいに情勢や民医連の歴史、今後の展望などについて書かれていて読みやすかった。学習資料としても活用していきたい」と感想が寄せられました。

 総会スローガン(案)については、綱領改定10年のあゆみを確信にすること、「医療・介護活動の2つの柱」が実践を通じて深まっていることを述べ、中長期的には医師確保と経営の改善を、全国の英知を集め、何としても突破する意味で強調しました。
 共同組織とともに地域の福祉力を育むと提起しました。福祉には、「人びとの幸福で安定した生活を公的に達成しようとすること」という意味があります。「公的」をキーワードにひとりひとりの権利として幸福や安定した生活を達成していくこと、それには安心して住み続けられるまちであることも含まれるという趣旨です。
 「タックル」について質問が寄せられています。2008年のWHO健康の社会的決定要因に関する委員会の最終報告書で「tackle poverty (貧困とたたかう)」と使われています。全日本民医連の「大切文書」でも「健康格差に果敢に挑む」という意味で使用してきました。「格差と貧困に立ち向かう」の「立ち向かう」という意味合いを強調し、使用しました。

 「ソーシャルワーク機能の強化」について質問が寄せられています。運動方針案はソーシャルワーカーの問題を提起したのではなく、今後さらに民医連が組織全体で力をつけていくべき重要なキーワードとして提起しました。
 医療・介護活動の重点として、断らない医療・介護、受療権を守ること、アウトリーチが日常的なとりくみとなるよう体制を確立することを提起しました。
 第2章第1節で「市民社会」という言葉を使いました。地球の危機から現在と未来を守る核兵器禁止条約の批准国は、方針案発表後も増加し35カ国となり、あと15カ国で発効です。地球環境保全、ジェンダー平等、#Me Tooなど多様性を認め合い、個人の尊厳を第一としたうねりが可視化され、社会を平和と人権の方向で動かした2年間でした。こうした力を最も広い概念として表す言葉として「市民社会」を使いました。
 この間、学生や若い世代の変化が顕著です。第1章第3節で提起した職員育成の前進の項で「民医連綱領に掲げる使命を果たすためには、民医連に参加する学生、青年職員の感性と知性を信頼することが大切」としました。考え方や思想にとらわれるのでなく、格差と貧困の広がり、平和の危機、気候の危機など、若い職員がおかれている実態から見て変えていこうとする青年職員の気持ちに働きかけることが大切です。

 安倍政権は、2012年の社会保障制度改革推進法により、社会保障は国の責任であり、権利であるという原則を変質させながら、全世代型社会保障改革という名称で解体を推しすすめようとしています。年金を減らし、受け取らない期間を拡大するために実質的に70歳まで働かせるとともに、後期高齢者の負担をさらに引き上げます。医療提供体制では、医師の養成数を削減し、医師不足を放置し、病床を削減、医療費の国民負担を引き上げ、医師の医療行為を看護師などに肩代わりをさせる、などです。公立・公的病院の再編統合計画に対しては多くの地域で住民による撤回へ向けた運動が始まっていることを強調しました。
 安倍政権が推しすすめようとしているもうひとつの暴挙は憲法改悪です。安倍政権は参議院選挙で改憲ノーの民意が明確となったにもかかわらず、公の場で5回も改憲発言をくり返しています。また新型肺炎コロナウイルスの感染拡大を利用して憲法に緊急事態条項を創設する改憲論を日本維新の会といっしょに持ち出しています。
 現在の感染症法は、ハンセン病、HIVの問題で患者がいわれのない偏見・差別に苦しめられた痛切な反省から、“予防・治療にあたっても人権の制限は慎重に”が原則です。人権を制限する緊急事態条項は必要性ありません。
 運動方針案では自民党改憲案がアメリカと一体に、日本が戦争する国になる危険性を3点記載しました。憲法9条を守り生かすことで、戦争する国にさせないことができます。改憲の動きを止める44期としましょう。
 いま緊急に必要なのは、「発議させないこと」です。これまでとりくんできた3000万人署名は、発議どころか改憲案を国会に提示することさえできない世論をつくり出す力を発揮しました。秋にあると言われる総選挙も展望して、「改憲発議するな」の声でさらに世論を広げることが重要です。理事会は「改憲発議に反対する全国緊急署名」を100万人分集めることを確認しました。決定された運動方針を大いに活用して、学びすすめていきましよう。
 4月には、2020NPT再検討会議に合わせて、「原水爆禁止世界大会inニューヨーク」が開催されます。広島・長崎の被爆者の経験が世界に向かって語られ、核兵器禁止条約を発効させる最大の機会です。この集会を成功させるとともに、核兵器を禁止させる年にしていきましょう。

 3・1ビキニデーが迫ってきました。民医連は被ばくした船のひとつ、第五福竜丸の地元である静岡・焼津に現地調査団を派遣し、「水爆灰被害の疑いのある人々についての医学的調査報告」を公表。医療支援にとりくみました。高知民医連から犠牲になった船員の労災申請の不承認取り消しの行政訴訟に対する支援要請があり、全日本民医連理事会は支援を決定しました。
 辺野古新基地建設の軟弱地盤の問題で、防衛省が「水面から70mより深い地盤は非常に固い」と報告しましたが、巨大な護岸を設置する予定の水面から90mの地点に軟弱地盤があることが明らかになりました。1兆円以上の費用がかかるとされる基地建設工事を隠ぺいし、リスクを少なく見積もり、強行することは許されません。
 東京電力福島第一原発事故から来月で10年目に入ります。事故被害の深刻さは方針案に書きました。私たちが原発ゼロを求めるのは、一度起こしたらいのち、暮らし、人生、ふるさとが切りすてられる事実からです。この運動の中で、原発ゼロ法案が国会に提出されています。紆余(うよ)曲折はありますが、運動は前進しています。
 安倍政権の9条改憲を阻止すること、13項目を実現する運動を力強くすすめる2年間とし、平和、人権の社会をつくるため、力を合わせていくことを情勢の最後に訴えます。

 第3章の冒頭で、前進面への確信と克服すべき課題について触れています。日本が戦争する国になるのかどうかの岐路の中、改憲を許さないことに全職員と共同組織が力を合わせて奮闘し、改憲発議どころか国会で審議すらさせることなく第44回総会を迎えられたことを喜びたいと思います。
 第2に綱領改定10年、綱領と歴史を学ぶ大運動は13万人以上の職員が参加し、民医連とは何か、何のために、誰のために自分たちの事業所は存在しているのか、民医連綱領にもとづく医療・介護活動への確信を広げ、これからの土台をつくりあげました。
 第3に、格差と貧困の広がり、社会保障制度の改悪のもとで、無差別・平等の医療・介護の実践を貫いて、地域に広げてきました。
 こうした前進面とともに、民医連の医師数の前進、経営課題の前進と管理運営のいっそうの改善、幹部養成、今日的な県連・地協機能の強化、実践を、克服すべき課題として提起しました。
 医師問題の前進のため500人の奨学生集団の実現、200人の新卒医師受入れのロードマップを決定し奮闘してきました。2020年1月末の奨学生は527人、2020年卒は203人がマッチングしています。43期には「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするか(=大切文書)」を提起、議論と実践をすすめています。
 経営課題、県連・地協機能の強化も厳しい状況はありつつも、前総会以後の郡山医療生協の前進、地協機能の強化で経営改善をすすめてきた経験と教訓を踏まえて、具体的な方針を提起しています。
 特別養護老人ホームあずみの里の裁判について、1月30日に東京高等裁判所で控訴審の第1回公判が行われました。高裁は、弁護団が提出した新たな証拠ならびに証人申請を却下し、結審するという暴挙を行いました。これは裁判を受ける権利を奪う行為であり、容認されるものではありません。全国からすでに3000を超える抗議と公正な裁判を行えという要請が、高等裁判所に寄せられています。訴えられている職員は無罪です。「介護の未来を奪うな」「公正な裁判を行え」と全力でたたかい、必ず無罪を勝ち取ることを確認したいと思います。

 民医連綱領の実践は、憲法と同じように完成されたものではありません。しかし、これからも民医連にこだわって「未完」だからこそ「発展」させていくことに価値があり、喜びがあると思います。

(民医連新聞 第1712号 2020年3月16日)

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