民医連新聞

2020年7月21日

これでばっちり ニュースな言葉 私たちの人権は守られる!? スーパーシティ構想

 新型コロナウイルス感染が拡大する5月中旬、国会では不要不急の国家戦略特区の新たな枠組みである「スーパーシティ構想」法案が可決しました。この法案の問題点について、NPO法人アジア太平洋資料センター〈PARC〉共同代表の内田聖子さんの解説です。

NPO法人アジア太平洋資料センター〈PARC〉共同代表

こたえる人 内田 聖子さん

 スーパーシティ構想とは、「AI(人工知能)などを活用し、複数の規制を緩和することで『丸ごと未来都市』を実現しよう」というものです。具体的には自動走行車、ドローンによる物品配達、インターネットを使った遠隔医療や教育、キャッシュレス化、行政サービスの電子化、水道やガス、電気など公共サービスの管理、監視ロボットによる安全管理など、複数の新技術を住民サービスに利用しようとするものです。
 このような計画は、一見、便利で快適なくらしを提供してくれるように見えます。しかし政府はメリットばかりを強調し、人権や自治、民主主義という観点からの課題は国会審議でもほとんどふれていません。

■「本人同意なし」もOK

 スーパーシティの肝は、「データ」です。現在、国や自治体は国民・住民の納税情報や医療・介護にかかわる個人情報、企業は消費者の購入履歴やネット上の行動履歴、スマホでの移動履歴など実に多様なデータを持っています。これらは個人情報保護関連法令によって管理され、勝手に共有することはできません。
 スーパーシティ構想は、国・自治体・企業の垣根を取り払い、多様な個人情報を収集・管理・連携し、サービスに利用しようというものです。当然、個人情報が異なる主体に提供される際には、本人の同意が必要となりますが、国会審議では国が「公共の目的に資する」と判断すれば、本人の同意がなくても他の主体に個人情報を提供できることなど、抜け穴もあることが明らかになりました。
 またマイナンバーとの連動や、監視カメラによって集めた個人情報の扱いも議論となりました。これらに対し、政府は「法令に従って運用するから問題ない」とくり返しますが、法律があるにもかかわらず、政府・自治体・企業による個人情報の流出は後を絶ちません。昨年話題となったリクナビの学生情報流出も、企業は法令にのっとり、学生本人の同意を取った上で情報を集め、それを企業に販売していました。こうしたリスクに対して、どのような安全策をとり、運用上の透明性を高めていくのか、サイバーセキュリティを含めた対応について政府の姿勢は極めて消極的です。

■地域内で情報格差

 海外では多くの事故や事件も起きています。例えば米国のスマートシティ計画では、自動走行車が人をはねて死亡させる事件が起きた際、責任は自動車メーカーにあるのか、AIソフト開発企業なのか、あるいは実証実験を許可した国や自治体なのかをめぐり大論争が起きました。
 地域内でのデジタル・デバイド(情報格差)も起こり得ます。そもそもこうした実証実験に「参加したくない」という住民の意思はどうなるのか。選定から実施プロセスにおいて地方議会の役割は位置づけられていません。

■住民主体の地域づくり

 このように課題山積のスーパーシティですが、秋にかけて「スーパーシティ自治体」の公募が始まります。すでに50以上の自治体が関心を示していますが、住民が知らない間に自分の自治体が選定されていた、というケースが続出することが懸念されます。
 しかし、住民にできることはまだあります。自分の自治体がスーパーシティに応募するとわかったら、住民への説明はされたか、リスクやデメリットは何か、運用上の透明性や責任、適切な規制措置は何かなど、住民側がチェックし、議会などで問題提起することです。国からの押し付けではなく、自治と民主主義の観点に立った住民主体の地域づくりを取り戻していく必要があります。

(民医連新聞 第1718号 2020年7月20日)

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