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2020年8月4日

フォーカス 私たちの実践 セクシュアル・マイノリティへの対応 山梨・共立高等看護学院 居心地の良い環境で人間性あふれる学びとケアを

 山梨・共立高等看護学院では、セクシュアル・マイノリティへの対応を通じ、学生ひとりひとりが尊重され、居心地良く学びに集中し、豊かな人間性を育むことができる環境を整えてきました。第14回全日本民医連学術・運動交流集会で、同校専任教員の河野朝呼さんが報告しました。

 学校のクラスに1~2人は、いずれかのセクシュアル・マイノリティであることが明らかになっています(電通ダイバーシティ・ラボ「2015年4月全国7万人インターネット調査」)。
 2016年、ある学生への対応をきっかけに、本校でも教職員、実習指導者などを中心にセクシュアル・マイノリティに関する学習会をすすめ、学校内の環境整備にとりくむことになりました。

■学習し対応を検討

 まず、教職員対象の学習会を開きました。テーマは「セクシュアル・マイノリティを学ぼう」。人としてのセクシュアリティの授業を担当していた私が講師を務め、教職員間でセクシュアル・マイノリティへの対応について、話し合いました。
 近年、セクシュアル・マイノリティへの理解がすすみ、同時期には文部科学省からも「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という文書が出されました。時代認識や一般的に求められている対応について、教職員も十分に学ぶ必要がありました。
 年に1度、法人実習指導者会議で学習会も実施。実習病院での更衣室、スタッフへの説明、患者選択の問題など、より具体的な対応方法の提案を行いました。

■環境を見直し改善

 あらためて見直すと、校内の環境は男女別を前提とする構造が多く改善の余地がありました。学生トイレは完全に男女別であったので、多目的トイレを新しく設置しました。更衣室のリフォームも必要でした。学生更衣室は、男女別室ですが、更衣時に使用できるよう各室内に個人スペースを設けました。
 これまで男子学生は男性用白衣、女子学生は女性用白衣を学生ユニフォームとして指定していましたが、2016年度からどちらのユニフォームも選択できるようにしました。翌17年度からは、男女兼用のユニフォームを導入し、ユニセックス化をはかりました。
 そのほかにも、セクシュアル・マイノリティ関連の書籍を校内図書として購入し、校内実習の男女別グループ編成への配慮、宿泊研修時の個別対応、日常的な個別相談なども行いました。対象学生だけを特別扱いせず、すべての学生の選択肢を広げました。

■学生たちから教えられ

 今回のとりくみは、セクシュアル・マイノリティのひとりの学生への対応としてはじめたとりくみでした。しかし、特定の学生のためだけではなく、すべての学生の人権やプライバシーを守るとりくみになりました。多目的トイレや更衣室の個別スペースを利用する学生は、予想以上に多く、利用が特別視されることはありません。プライベートを守れる環境がきちんと保障され、しかもそれが差別や特別扱いではないことが、マイノリティにとっては重要です。本来、教育や医療・介護の現場は、ひとりひとりの多様性が特に大事にされるべき場所。安心できる居場所があってはじめて、学習に集中し、多様な患者・利用者のケアができるからです。そうした環境が豊かな人間性も育みます。私たちは、これまで表面化していなかったニーズがあったことを、ごく自然に受け入れてくれた学生たちの反応から教えられました。
 同時に、柔らかい発想ですぐに動いてくれた職場、甲府共立病院など実習受け入れ先の対応に、あらためて、民医連らしさを実感しました。法人実習指導者会議での学習会は2016年からこれまでに4回実施しました。昨年からは実習先での学生へのセクシュアル・ハラスメントが大きなテーマになっています。同会議での経験交流は、大学病院など民医連外の実習受け入れ先での対応に生かされています。
 今後も学生たちとともに、互いが尊重され、看護を学ぶことに集中できる環境を追求していきたいと考えています。多様性を受け入れる民主的な社会に向けて、人権意識を高く持ち、豊かで人間性あふれる教育をめざし、学生たちとともに学んでいきます。

(民医連新聞 第1719号 2020年8月3日)

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