声明・見解

2020年7月30日

【声明2020.07.30】「黒い雨」訴訟広島地裁の判決を支持し、速やかな被爆者救済を求める

2020年7月30日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田剛

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」によって健康被害を受けたとして、被爆者の認定を巡り2020年7月29日広島地裁は原告側の主張を認め、広島市や県に対し被爆者手帳交付申請の却下処分を原告84人全員について取り消し被爆者健康手帳の交付を命じた。
 これまで国は「黒い雨」が降ったとされた地域のうち「大雨地域」のみを援護対象地域に指定し、不当な線引きをしていた。しかし本判決では、広い範囲で「黒い雨」が降った可能性があることを認め、被爆者援護法1条3号を原爆の放射線により健康被害が生じる可能性があったと解釈するのが相当であり、原告の「黒い雨」を浴びたという供述に不合理な点がなく、原爆の影響と関連が想定される病気を発症しているとして原告全員を被爆者と認めた。
 これは放射線の影響の立証に具体的な被ばく線量など厳格な科学的根拠までを求めず「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった」者も援護を受けられるようにしている被爆者援護法の趣旨に沿ったもので極めて妥当である。さらに、「黒い雨」被爆者を正面から3号被爆者として認めると同時に、いわゆる「大雨地域」のみを援護対象地域としてきたこれまでの範囲そのものの見直しを迫る画期的な判決となっている。
 被爆後75年の間、「黒い雨」訴訟の原告らも被爆者として様々な健康被害に苦しめられてきた。被爆者の高齢化も進む中、速やかな救済が求められる。また、こうした長い月日を経てもなお、被爆者の体と心を苦しめ続ける非人道的な核兵器を許すわけにはいかない。
広島市長と広島県知事には、原告全員に対して速やかに被爆者手帳交付し、すべての「黒い雨」被爆者の救済を求める。そして控訴を断念すべきである。
 また、日本政府に対して、唯一の戦争被爆国として非人道的な核兵器によって二度と被爆者を生まないため、核兵器自体を違法とし全世界から廃絶させるために、核兵器禁止条約の批准を求める。
 全日本民医連は、引き続き被爆者のいのちと暮らしに寄り添い、核兵器のない世界を願う市民社会に連帯し、その日が実現するまでともに歩み続ける。

以上

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