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2020年10月6日

住民不在の「大阪都構想」 大阪市廃止ではなく「いのち守る大阪市」を

 大阪府と大阪市は、大阪市を廃止し4つの「特別区」に再編する、いわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票を、11月1日に実施しようとしています。「都構想」とは何なのか、すすめられると住民サービスはどうなるのか。大阪民医連は大阪市廃止・解体に反対しています。釘宮隆道県連事務局長の寄稿です。

■再び大阪市廃止・分割を問う住民投票

 大阪府議会(8月28日)、大阪市議会(9月3日)は、大阪市を廃止し、4つの「特別区」に再編する「協定書」(いわゆる「都構想」)を議決しました。その結果、60日以内に大阪市の廃止・分割を問う「住民投票」が再び行われることになりました。
 「都構想案」は2010年、橋下徹府知事(当時)が維新の会結成と同時に掲げたもの。大阪市を廃止し、大阪府の権限・財源を巨大化すれば、大阪が発展する、と主張しました。しかし、15年の住民投票で否決。にもかかわらず、今回も区割りや名称を変更しただけで、本質的な内容は何も変わっていません。さらに、協定書は今年の新型コロナウイルス感染拡大の前に策定されたもので、感染対策などはまったく考慮されていません。「都構想」と言いますが、仮に住民投票で可決されても大阪都ができるわけではなく、大阪市がなくなるだけです。
 7月30日、府・市内の各団体とともに大阪府、大阪市に対し、新型コロナウイルス感染症が再び拡大するもとで、医療体制の充実、少人数学級の実施、公立病院や保健所の機能の充実と人員体制の拡充を求めました。さらに「大阪市を廃止する協定書の採決を止め、コロナ対策に全力を!」の陳情署名4万4008筆を大阪市議会に提出しました。
 大阪府では、新型コロナウイルス感染症による死者が8月には62人にのぼり、いのちが脅かされています。そんな中で、「協定書」の議決を強行した維新の会と公明党、一部の自民党府議に対して、大阪民医連は満身の怒りをもって抗議声明を発表しました。

■経費の増大で住民サービスの切りすて

 政令指定都市である大阪市を4つの特別区に再編すれば、スケールメリットはなくなるとともに必ず経費が増大します。法定協議会に出された資料では、新庁舎建設を先送りしても、初期コスト241億円に加え、毎年30億円のランニングコストという無駄な経費が必要になる、としています。
 一方、大阪市解体後の「特別区」の一般財源は大阪府に多く吸い上げられるため、3分の1に縮小します。大阪市解体後の4つの「特別区」は、まるで大阪府から「お小遣い」のような調整交付金をもらう従属団体となってしまいます。しかも、「特別区」になれば、大阪市の時に比べて国からの財源の地方交付税を減額されるため、収入減は確実です。
 介護保険も、現在の大阪市24行政区での対応から、「特別区」共同の一部事務組合が担当する計画で、介護保険の充実や政令市で一番高い保険料の減額を求める声は、ますます届かなくなります。大阪市解体は、間違いなく住民サービスの切りすてです。
 維新の会は「二重行政」だとして、市民のいのちを守る市立住吉市民病院をつぶしました。同院の解体工事は、コロナ禍の3月から始まったのです。本来、市民にとって必要なことは、二重にも三重にも行政がやるべきです。

■経済成長一辺倒の政策の転換こそ必要

 維新の会は、大阪「都構想」で「大阪の成長をスピードアップする」と説明しますが、その成長の中身はカジノ・IRやインバウンドの増加だとしています。これらはコロナ禍によってことごとく破綻が見込まれる内容です。
 私たちがポスト・コロナを展望した時、これらのビジョンからの脱却が求められます。また気候変動による地球的危機を回避するためにも、「経済成長」一辺倒の政策の転換が必要です。
 大阪民医連では、府・市の各団体や個人と心を合わせ、「大阪の未来は私たちの手でつくる」という決意を固め、きたる「住民投票」で、再び「大阪市廃止・解体ノー」の審判を下すため、全力でたたかう決意です。

(民医連新聞 第1723号 2020年10月5日)

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