介護・福祉

2021年3月2日

診察室から 「患者」と「医者」ではなく

 みなさん、こんにちは!私は鳥取生協病院で消化器内科医として、すえひろ生協診療所で訪問診療医として、勤務しています。訪問診療は医師3年目からスタートし、はや11年目となります。
 利用者の生活の場にお邪魔する訪問診療では「患者」と「医者」というよりは、「利用者の〇〇さん」と「〇〇さんの在宅生活をサポートする人」という関係であるように感じます。利用者さんが入院すると、わずか数日で「患者」の顔つきに変わります。退院後、初回の訪問診療に伺うと「デイサービスで碁を打つのを楽しみにしている〇〇さん」の顔つきになっています。病院でなければできない治療はもちろんたくさんありますが、この変化を目の当たりにするたびに、「早く在宅に戻ってもらいたい!」と強く思います。
 また、利用者のみなさん方の大半は人生の大先輩であり、介護にあたる家族や施設の職員も多くが先輩です。料理や文芸、鳥取の古くからの慣習や人生観・死生観など、教えていただくことがたくさんあり、人生の大きな学びの場にもなっています。当院では、初期研修医に私の訪問診療に同行してもらっていますが、「世間話ばっかりしているな…」と思っているのではないでしょうか(と、実際に感想を言われたこともあります)。
 コロナ禍で病院が面会禁止となっている影響もあり、在宅での看取りもニーズが増しているという実感があります。私自身、6年前に母を自宅で看取りました。ポート穿刺(せんし)や導尿、麻薬の調整など、自分が医療者だからできたな、と感じる部分も多々ありましたが、訪問診療や訪問看護など、多くの人のささえがあってこその生活でした。「今の場所での生活を続けたい」「最期のときを自宅で迎えたい」という気持ちがありながら、サポート体制の点で断念する人もまだまだたくさんいます。そうした人たちに、「ああ、良かった」としみじみ感じてもらえるように、これからもお手伝いをさせていただきたいと思っています。(大廻あゆみ、鳥取生協病院)

(民医連新聞 第1732号 2021年3月1日)

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