民医連新聞

2021年6月22日

2021 選挙に行こう “病床削減”でいのちの危機 地域医療構想は見直し 424病院の再編リスト撤回を

 政府は6月9日、いわゆる「骨太の方針」2021原案を公表し、コロナ禍を経てなお、2025年度までの「財政健全化目標を堅持する」と明記しました。政府がめざす財政健全化の中身には、社会保障分野で地域医療構想を推進して「病床機能の分化と連携の強化」で病床を削減し、国民の医療費を抑制することが含まれています。いのちを顧みない「改革」を、このまま許すのか―。秋までの総選挙の争点のひとつです。(丸山いぶき記者)

病床削減ありきの地域医療構想

 地域医療構想は、2次医療圏を基本とした構想区域ごとに、2025年度にめざすべき医療提供体制を国の主導で定めたものです。16年度までにすべての都道府県で策定されました。地域医療構想が求めているのは、(1)病床数全体の削減、(2)「慢性期」病床の削減(介護施設、在宅へ)、(3)「急性期」から「回復期」病床への移行促進、です。構想区域内の病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期に機能分化し、4機能ごとに医療需要と病床の必要量を推計。各医療機関の状況を「病床機能報告」で可視化し(図1)、構想区域の「地域医療構想調整会議」がPDCA(plan-do-check-act)サイクルでくり返し協議。知事権限で達成に向け医療機関に圧力をかけ、2025年度の病床数(見込み)も提出させて、病床を削減させる仕組みです。
 しかし、地域医療構想は、地理的条件や経済的理由などを勘案した本来の医療ニーズや地域の実情、住民の意見を反映していない、感染症医療などの視点がないなど、多くの問題点が指摘されています。


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突然の発表 424再検証要請

 厚労省は2019年9月、全国424の公立・公的医療機関について「再編・統合の必要がある」と公表しました(現在436病院に。以下、424再検証要請)。対象病院は「診療実績」と「類似かつ近接」を基準に選定。各都道府県に提出させた17年度の病床機能報告と25年度の見込みを集約して比べると、公立病院(自治体立)は803床減、公的医療機関()は1002床増で、国のねらいに反して病床削減がすすまないことへの焦りから来た公表、とも言われています。

地域の最後の砦が「再検証」の対象に

 これに対して、全国から怒りの声が噴出しました。「広島民医連が19年11月に行った自治体キャラバンアンケートでは、対象病院がある小規模自治体から不安と戸惑いの声が上がった」と話すのは同県連の佐々木敏哉会長です。
 広島県は25年度までに最大6634床、13年度比で81・2%まで病床を削減しようとしています。調整会議を経て夜間救急の受け入れをやめた因島(いんのしま)総合病院について、「車がない人はここが最後の砦なのに」「市の中心部(尾道)の病院に運ぶとなると30分以上かかる」など、住民の動揺が大きいとの報道もあります(20年3月「中国新聞」)。島へ続く橋は、悪天候で通行止めになることもあるといいます。同院は、424再検証要請の対象病院です。
 20年3月、広島民医連は県社保協や医労連など8団体と「公立・公的医療機関再編ストップ! 広島県共同行動連絡会(424共同広島)」を発足させました。県内12の対象病院(当初13)がある地域に「いのち署名」はがきを送ると、住民から大きな反響があり1万4500筆が集まりました。

総選挙で病床削減ストップを

 地域の事情や病院の役割を無視した機械的判定、国の政策の強要、地方自治の無視、地方の医療崩壊につながる、などと批判される424再検証要請。厚労省はコロナ禍でも撤回はしておらず、さらに対象から外れていた都市部の再検証、民間病院リストの公表もねらっています。
 今国会では、消費税を財源に病床削減への補助金を法定化する医療法一部改定法と、75歳以上医療費窓口負担2割化法が成立しました。佐々木さんは総選挙に向けて呼びかけます。「病床削減も75歳以上窓口2割化も実行させない、あきらめない運動が求められる。424再検証問題では、住民や自治体は運動のパートナー。全国で展開してきた運動を励みに、総選挙をたたかいましょう」
※自治体の組合・国保連・日赤・済生会・農協などが開設

7月の東京都議選で都立病院の独立行政法人化を阻止

 7月に都議会議員選挙が迫る東京都では、8つの都立病院と6つの公社病院が、ひとつの独立行政法人にされようとしています。424再検証要請(東京では9病院が対象)とともに都民のいのちが危機に! 「都立病院の充実を求める連絡会」代表委員の前沢淑子さんに聞きました。

■「行政的医療」が削られる!?

 2019年12月、東京都の小池百合子知事は突然、都立・公社病院の地方独立行政法人化(以下、独法化)を表明しました。
 この独法化も要は「病床があるから、病院があるから、医療費がかかる。東京都からの財政支援(都立病院に400億円、公社病院に60億円支出)は無駄」という新自由主義的な政策です。東京都ではすでに、16あった都立病院が石原都政で8つになっています。
 しかし、都立・公社病院はそれぞれに特色を持ち、地域の住民や開業医にとって重要な存在です。感染症や救急、周産期、小児、精神、難病、障害者、へき地・島しょ医療など、採算がとれず民間病院が手を出しづらい「行政的医療」を担っています。都内全病床の6%を有するに過ぎない都立・公社病院が感染症指定病床の68%、コロナ禍ではコロナ病床の36%(3月時点)を担えるのも、都の直営だからです。
 06年に独法化された大阪府立の5病院は、初年度に職員賃金17億2000万円を削減。個室料金は1日最大5万9000円になり、分娩料金9万3000円が18万円になるなど、患者負担が大幅に増えました。その影響はコロナ禍で明らかになっています。
 都立・公社病院を独法化すれば、都議会の審議を経ずに患者負担を増やすことが可能となり、住民の声を反映できなくなります。不採算な「行政的医療」はたえず後退のおそれにさらされ、職員の身分保障もありません(図2)。

■都議選勝利で国政に弾みを

 先の都議会では「コロナ禍で独法化などありえない」との声が届き、独法化に必要な「定款」は提出されませんでした。424再検証要請の対象病院を守る会も結成され、連帯したとりくみも広がっています。訴えが住民に届いている手応えを感じます。
 まずは都議会議員選挙で独法化反対の議員を過半数にして独法化を撤回させる! 続く総選挙で、424再検証要請を撤回させる野党連合政権をめざしましょう。


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(民医連新聞 第1739号 2021年6月21日)

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