声明・見解

2021年7月16日

【声明2021.07.15】国は「黒い雨」訴訟広島高裁の判決を受け止め、速やかに全ての被爆者救済をせよ

2021年7月15日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛

 2021年7月14日広島高裁は、広島への原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を浴び健康被害を受けにも関わらず、国の援護対象から外された地域の84人が広島県と広島市に被爆者健康手帳などの交付却下処分の取り消しを求めた黒い雨訴訟で、原告全員への被爆者健康手帳の交付命じた広島地裁の判決を支持し、広島県、広島市及び厚生労働大臣による控訴を棄却した。

 昨年の広島地裁の判決では、これまで国が「黒い雨」が降ったとされた地域のうち「大雨地域」のみを援護対象地域に指定していたことに対し、広い範囲で放射性物質を含む雨が降った可能性があることを認めていた。さらに今回の広島高裁控訴審判決では、黒い雨に直接打たれた者は無論のこと、たとえ黒い雨に打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸引したり、地上に到達した放射性微粒子が混入した飲料水・井戸水を飲んだり、野菜を摂取したりして、内部被曝による健康被害を受ける可能性があったことを認めた。これは、「黒い雨」による被爆者健康手帳交付の基準そのものの見直しを迫るもので、被爆者たちの切実な思いを正面から受け止めた判決となっている。

 被告のひとつである広島県の湯崎知事はこの判決を受け「今苦しんでいる黒い雨体験者の切実な思いが高裁でも認められた」と述べ「県としては上告したくない」との考えを示している。これは高齢化が進む被爆者の訴えに寄り添った姿勢である。

 全日本民医連は、広島県、広島市及び厚生労働大臣に対し、上告を断念し、この判決と被爆者の訴えを正面から受け止め、全ての被爆者の早期救済を行うことを求める。
 原子爆弾は多くの人々の命や健康、生活を奪い、76年を経た今も被爆者は傷を背負わされ続けている。日本政府に対しては、こうした非人道的な核兵器による被害を二度と生まないため、唯一の戦争被爆国として核兵器自体を違法とした核兵器禁止条約に参加し、核兵器廃絶へ向け議論の先頭に立つことを求める。

 引き続き被爆者のいのちと暮らしに寄り添い、核兵器のない世界を願う市民社会に連帯し、その日が実現するまでともに歩み続ける決意である。

以上

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